BIZREN☆通信 11号 「企業内診断士の多様性」

2019年10月 小川 貴之

まず、台風19号により被災された方々に、心よりお見舞いを申し上げます。BIZREN会員の皆様ご自身のみならず、ご家族、ご友人、勤務先および中小企業診断士としてのお客様などまで視野を広げると、かつてない規模の台風の前には誰しも無関係ではいられなかったのではないでしょうか。被災された方々におかれましては、復興にはご苦労も多いと思いますが、1日でも早く平穏な生活に戻れますようお祈りいたします。

【実務従事プロジェクト参加】

さて、我々企業内診断士によくある「中小企業診断士としてのスキルを磨く場が少ない」、「資格更新に必要な実務従事ポイントを獲得する機会がない」といった悩みに応える形でBIZRENが設けている機会の1つ「実務従事プロジェクト」に、先日、他のメンバーと合わせて計6名で参加させていただきました。

試験合格後に課せられる実務補習よりも自由度は高く、指導員も、明確な期限も、報告様式もなく、より実践的に実際の中小企業の診断を行うものです。実務補習のような総合診断でもよし、テーマを絞って補助金申請等に特化するもよし、診断先のニーズやメンバーのリソースに合わせて都度検討することになります。

企業診断に限らず、チームで仕事に取り組むにあたっては、メンバー間で得意分野や取り組み方のバランスが取れることが重要です。その点、今回のメンバーは経験や得意分野がうまく散らばっており、いわば“多様性” がうまく噛み合った結果、ヒアリングから報告会までを大過なく実現できました。

結果として、毎月の定例会だけではなかなか知ることのできないメンバーの個性に触れることができる貴重な機会にもなりました。この場を借りて、ご一緒させていただいたメンバーに改めて御礼を申し上げます。

【注目される“多様性”】

多様性といえば、最近は各分野でこの言葉が頻出しています。企業経営のシーンでは、外国人従業員を採用する日系企業はいまや珍しくもありませんし、エグゼクティブ層に目を向けても、金融庁・東証が取りまとめた<コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)>では、「取締役会はジェンダーや国際性の面を含む多様性を確保し、経営の監督の実効性を高めるべき」旨が記されています。

スポーツの世界でも、たとえばW杯でベスト8進出を果たしたラグビー日本代表は、出場選手に国籍要件を求めておらず、日本人・日本国籍を持つ海外出身者・外国籍の混成チームとなっています。

ところで、これらの多様性というのは、外形的な属性を取り上げたものがほとんどです。ここからさらに踏み込んでいった先にあるのは、個々の行動・心理特性です。ご参考までに、この点に注目した研究としては先駆けともいえる、ベルビンという社会心理学者のチームロール理論の一部を簡単に紹介します。

(ベルビンのチームロール理論)

・チームが成功するには9タイプの役割が必要(下表参照)

・役割は個人の心理特性によって決まる場合が多い

・必要なのはバランスのとれた個人ではなく、他者とバランスを取れる役割を持つ個人である

1人1人を見れば有能な人材で編成されたチームでも,成績の良いチームと悪いチームがありますが、1つのチームに同じ役割の人間ばかりがいてもチームはうまく機能しないということでしょうか。経験的にも納得しやすい理論のように思います。

【企業内診断士の“多様性”を活かすために】

多様性が機能するためには、お互いを尊重し調整する姿勢や仕組みが必要になります。実務従事プロジェクトのように中小企業診断士がチームアップして活動する時も、同様でしょう。

BIZRENには、同じ中小企業診断士でありながらまったく異なる文化の企業・部門で成果を上げている、まさに多様な人材が揃っています。加えて、企業内で仕事を進めるうえで重要な、他部門・他の従業員の意向を尊重し調整するという姿勢を備えているはずです。これら“多様性”と“尊重”は、我々企業内診断士が連携し活躍していくための拠り所ではないかと思います。

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執筆者プロフィール

小川 貴之(おがわ たかゆき):

2019年4月診断士登録

新卒で製紙会社に入社後、新聞用紙の生産計画担当、企業内労働組合の専従役員を歴任し、現在は株主総会や取締役会といった、会社法・コーポレートガバナンス関係業務に従事。

趣味は大学在学時のサークル活動を契機に始めた書道。今でも年に1度、当時の仲間と合同で個展を開催しています。