2019年9月 八木 晴信
私の今最も夢中になっている事柄のひとつが、ワインです。もっと深く知りたいと思い、山梨県で営まれているワイナリーのヴィンヤードクラブへ入会し、毎月、葡萄畑へ出向いて愛しい葡萄の世話をしています。冬の枯れ木のような休眠期から見てきた葡萄の木が、このコラムが出る頃には収穫できるまでに立派に育ち、醸造に向かっていくことでしょう。愛情を込めて見守り育ててきた葡萄からできたワインを味わい、堪能する日が待ち遠しいです。
日本で栽培された葡萄100%を使用し日本で醸造したワインを、「日本ワイン」と表示できることをご存知でしょうか。「国産ワイン」は、外国から濃縮還元果汁を輸入して日本で醸造したものも含まれます。神奈川県がワイン生産量No.1なのは、輸入した原材料を使用して大手飲料メーカーの工場で醸造されているからで、日本ワインに限定すれば、山梨県が生産量No.1です。
地理的表示(GI)保護制度に日本ワインの表示の法令化が加わったことで、消費者にとってもワインの違いが認識しやすくなったと同時に、ワイナリーにとってもグローバルの舞台での差別化が可能となりました。全国で約300軒ある日本のワイナリーは96%が中小企業で、我々、診断士の支援対象です。私は将来、日本のワイナリーの支援をすることを目指しています。診断士の使命である日本の発展に貢献するためにも、メイドインジャパンはど真ん中です。
ヴィンヤードクラブやワイナリー巡りを経験し、診断士として見えてきたワイナリー経営の課題があります。ワイナリーの起業は、初期投資が高額です。醸造機械は、1台数百万円以上で、何種類も必要であり、しかも醸造機械は年1回、秋しか稼働せず、ほとんど遊休の固定資産となっています。また、残念なことに、醸造の機械も醸造につかうオーク樽も国産のものはなく、輸入品を使用しています。企業連携で国産機械、林業との協業で国産樽が作れないものかと色々思案しています。
秋の収穫後の仕込みの時期は、ワイナリーは農業者から食品製造業に変わります。収穫されてきた葡萄でその年の醸造方法に変化を加え、各工程に流し醸造していく、その一方で、如何に効率的に作業ができるかも重要になってくる、諸々診断士にお手伝いができそうなところです。
原料となる葡萄の確保でいえば、自社畑からの収穫か、原料として他の畑のものを仕入れるかになります。苗木の価格高騰や葡萄の仕入れ値の高騰があり、収益性は下がっています。また、自社畑を持てば、収穫の時期には人手不足に頭を抱えます。何トンという葡萄を、時期を逃さず収穫する必要があり、そんなうまいタイミングで高品質な労働力を獲得していく方法を持ち合わせていなければなりません。
他には、日本ワインは日本製であり原価が高いので、輸入ワインとの価格勝負では分が悪く、さらにブルゴーニュなど高付加価値のブランドワインと競合になります。ワイナリーでの試飲を始め、SNSの活用やイベントへの出店でブランドの露出を増やすとともに、新規を含め顧客とのコミュニケーションの場と多く作り、ブランドを浸透させていくことが重要になります。
私も体験しているヴィンヤードクラブは、ワイナリー経営にとってとても重要な取組と言えます。葡萄を育てたい欲求を持つファンに葡萄栽培の場を提供する事によって、収穫時には高品質な労働力を確保できます。定期的にワイナリーへ来訪させ、メンバー特典を設ければ、ワイン販売も期待できます。良い口コミを広げ、新たなファンも獲得が可能になり、高品質な労働力確保とファンの定着を獲得できると考えられます。この取組みは、魅力あるワイナリーがファンを引き付け続ける努力をされているからこそできる取組なのです。
ワイナリーのみなさんは、ワインの魅力に魅せられ、取りつかれ、世界一の品質を目指し、そこでしか作れないこだわりのワインを作っています。ワインには、ストーリがある。作り手の想いと大地の声、ヴィンテージ。モノからコトへと消費者の傾向が変わり、ストーリを持って共感されるものが選ばれる時代になった。ワインはこの傾向に合致しており、需要も拡大していることから、まさに追い風となっています。さらにワインツーリズムなどで観光素材としても利用すれば、地域活性化にも貢献できます。
ただのワインラヴァーというところからワイナリー支援を目指す企業内診断士の妄想は果てしなく続きます。
私にとってワインは、食事に彩りを添えるだけでなく、葡萄栽培から始まり様々な人との係わりや経験を与えてくれ、私の人生を非常に彩ってくれています。 私は、ワインでいう樽のような存在で、ワイナリー経営へ香りづけできることを目標に、これからも日々のお仕事と診断士活動、ワイナリー巡りに精進して参ります。
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執筆者プロフィール
八木 晴信(やぎはるのぶ):
2018年3月診断士登録。鉄道会社に勤務。鉄道現場での勤務後、インターネットでのチケット発売システムの企画・開発に長く従事。
名古屋に単身赴任3年目。日本ワインマスターを目指し勉強中。
千葉ジェッツ、オービックシーガルズ、習志野シティFCを応援しています。