BIZREN☆通信 35号 超加工食品

「超加工食品」という言葉を御存じでしょうか。宇宙食や未来の食べ物を想像した方も多いかと思います。「超加工食品」という言葉は最近になって使われ始めた言葉ですが、実はほとんどの方が日常的に食べており、非常に身近な食品なのです。

 超加工食品という言葉は、意味が定義されているわけではありませんが、一般的には「複数の食材を工業的に配合して製造し、加工の程度が非常に高い食品」とされています。代表的なものは、ハムやソーセージ、菓子パン、清涼飲料水、インスタントラーメン、冷凍食品などです(ただし、研究者によって分類方法やルールが違い、一概に言えません。)。

出典:朝日新聞2024年10月18日

 代表例を見てもわかるように、超加工食品は食生活において非常に身近な存在です。しかし、これらの食品は製造過程で栄養素が失われやすく、代わりに塩分、糖分、脂肪、添加物が多量に含まれている、という特徴がありす。そして、超加工食品は非常に便利な存在ではありますが、その手軽さの裏で健康への様々な影響が、多くの研究によって明らかになってきています。

 超加工食品の摂取と健康との関連性についての研究結果をいくつか御紹介します。

①フランスの研究チームが10万人を超える対象者を10年間追跡調査。超加工食品の摂取量が多いほど、全死因死亡リスク が高まることが明らかになりました。

②イギリスの研究では超加工食品の消費量が多いほど、特に卵巣がんや乳がんによる死亡リスクが高いことが示されました。

③ブラジルで行われた研究では超加工食品の摂取と認知機能の低下との関連性が示唆されました。

④アメリカの研究では、超加工食品の摂取と心血管疾患リスクの増加との関連性が報告されています。特に、心血管疾患による死亡リスクの上昇が顕著でした。

⑤世界各地で行われた複数の研究で、超加工食品の摂取とメタボリックシンドローム発症リスクに関連性が示されています。

このように、超加工食品が健康に与える影響について世界的に関心が高まっています。しかし、日本においては大規模な研究はまだ十分に行われていません。そのような状況でも、東京大学大学院医学系研究科・医学部では研究が進められています。研究成果の一つとして、日本の子ども(3~17歳)における超加工食品の摂取量と食事の質との関連性が明らかになっており、超加工食品の摂取量が多いほど食事の質が低い(野菜、果物、豆の摂取が少なく、菓子の量が多い)という傾向が見られました。

 なお、これらの研究は、超加工食品の摂取と様々な健康リスクとの関連性が示されていますが、必ずしも因果関係が証明されているわけではありません。他の要因も影響している可能性もあります。また、個人の体質や生活習慣によっても超加工食品の影響は異なってきます。

 健康に様々な影響与える恐れがある超加工食品ですが、摂取を減らすためには、どのようにすれば良いでしょうか。参考までに次の事を気にかけてみてください。

①自炊を増やす: 自炊することで、使用する食材を自分で選ぶことができ、栄養バランスの改善が期待できます。

②加工食品を選ぶ際は表示をよく確認する: 添加物の量や種類、原材料を確認し、できるだけシンプルなものを選ぶ。

③間食は控える: 間食をする際は、果物やナッツなど、自然な食品を選びましょう。

 超加工食品は健康を害する恐れが示唆されていますが、入手しやすかったり、調理が簡単だったり、長期間保存出来るといったメリットもあります。健康との関連性もまだまだ研究が必要ですし、超加工食品を食べなければ健康を保てるというわけでもありません。現時点では、超加工食品のメリットを享受しつつ、できるかぎる超加工食品を避け、バランスの良い食事に気を配るのが私たちができる現実的な対応だといえます。

執筆者プロフィール

大宮裕喜(おおみや ひろき):2012年中小企業診断士に登録。

Biz連には2024年より参加。食品業界に30年ほど関わっており、現在は中小食品メーカーを営業面からサポートしている。

趣味は競馬。現在はちょうど秋のG1戦線の真っただ中で、毎週末は予想に時間を費やし、不本意ながらお金も費やしてしまってます。