人生100年時代に向けて、健康のプライオリティがますます上昇しています。そのような中、厚労省が公表している「健康づくりのための身体活動・運動ガイド」が2023年に10年ぶりの改訂となり、「筋トレ」が健康寿命延伸にとって重要な役割を果たすことが明記されました。このように近年筋トレは健康に良いことであることが明確になってきましたが、なかなか初心者にはハードルが高いのが現状です。本稿では、筋トレをこれから始める初心者の方向けに、適切な重量設定、セット数、インターバル、トレーニング頻度、種目数など基本的な意識すべきポイントを整理しました。効率的に筋肥大を目指すための基本ルールを一緒に確認していきましょう。
① “反復8~12回”で限界を迎えることができる“重量”を選択
筋肥大を狙うなら、8~12回の反復で限界がくる重量を選ぶことが重要です。
具体的には、最大挙上重量(1RM)の75~80% くらいが目安。例えば、ベンチプレスの1RMが50kgなら、35~40kgの重量でセットを組みましょう。重量が軽すぎると筋肥大に必要な刺激が不足し、何十回も反復しなければならず精神的にキツく、結果的に追い込めないことが多いです。一方、重量が重すぎると反復回数が減り、トレーニングボリュームを確保しづらくなる上、フォームが乱れやすく、怪我のリスクも高まるため初心者にはオススメできません。
② 1種目あたり、最低3セット実施しよう
筋肥大を狙うなら、1種目あたり最低3セット行うことを推奨します。
特に初心者は、1~2セットでは筋肉をオールアウト(エネルギーが枯渇して運動を継続できなくなった状態)させるのが難しいため、ある程度のセット数をこなす必要があります。
とはいえ、セット数が多すぎると後半のセットの質が落ちてしまうことや、セット数をこなすこと自体が目的になり、前半のセットで無意識に手を抜いてしまうということにも繋がりかねないため、はじめは3セットを基本にし、多くても5セット程度にとどめておきましょう。
③ セット間のインターバルは1~3分を目安にしましょう(種目や部位などによって異なる)
次のセットのクオリティを保つためにも、セット間でしっかり休憩することは重要です。ただし、休み過ぎると心拍数が下がりすぎて集中力が切れるなどのデメリットもあるため、適切なインターバルを設定することが大切です。その目安はだいたい1~3分程度です。
脚などの大きな筋肉は回復に時間がかかるため2~3分、腕などの小さな筋肉は回復が早いため1~2分でも次のセットの質を確保しやすい傾向があります。(パワーリフティングの練習などでは、5分~10分などもっと長くインターバルを取る方が有効であったり、例外はあります)
また、息が整い「よしやるぞ」と気持ちが切り替わってから再開するということも重要な考え方です。
実際に試しながら種目ごとの適切なインターバルを見つけましょう。
ジムの混雑時は、休み過ぎて器具を独占しないよう注意してくださいね!
④初心者の方は、1つの“部位“あたり、週に10セットを目安に
初心者の方が筋肥大を最大化するには、1部位あたり週10セット程度のトレーニングが有効とされています(Schoenfeld et al., 2017)※他の研究では異なる結果が出ていたりなど、諸説あり。
初心者の方にとっては、適切な必要ボリュームというものを意識することがまず重要かと思います。
その点、週あたり10セットという数字は、一旦の有用な目安です。
また、筋肉の超回復には2~3日かかるため、10セットを週2回に分けるのが理想的。例えば、月曜日に5セット、木曜日に5セットといった形で2~3日間隔を空けながら刺激を与え続けることで、筋肥大の効率を最大化できます。
⑤種目数は無理に増やさず、1部位あたり1~2種目くらいに絞って、“質“を高めていこう
昔の私のように、筋トレに目覚めたばかりの初心者にありがちなのが、やる気がありすぎて色々な種目をやりたくなってしまうこと。
もちろん、やる気は素晴らしいのですが、振り返ると種目数を絞り、1つ1つの質を高めることが成長への近道だったと感じています。
例えば、私は胸のトレーニングだけで5種目くらい行っていた時期がありましたが、最後の4~5種目目は筋肥大に繋がる刺激になっていなかったと思います。理由は、1~3種目で胸の筋肉をオールアウトできていたはずなのと、後半は集中力が落ち、動作のクオリティも低下していたからです。
上級者になれば、多様な刺激が必要になりますが、初心者のうちは少ない種目でも十分成長できます。
むやみに種目を増やすのではなく、1~2種目に絞り、フォームや負荷を意識して質を追求することを心がけましょう!
執筆者プロフィール
中村 亮太 2023年12月中小企業診断士登録
医薬情報担当者・NSCA認定パーソナルトレーナー・管理健康栄養インストラクター。製薬会社に勤務し、MRとして生活習慣病領域を中心に医師・薬剤師向けに情報提供活動を経験したのち、現在は医薬品のSCM業務に従事。
副業パーソナルトレーナーとして、トレーニング指導や食事指導を多数経験。ボディビルコンテストに出場しており、2024年ベストボディジャパン関東大会では3位に入賞。