BIZREN☆通信 36号 レンズ越しに見た日本社会の変遷

2024年からBIZRENに参加しております松田と申します。
私は現在、電機メーカーに勤め、監視カメラシステムの事業推
進をセールスとマーケティングの責任者という形で関与しておりま
す。今の会社に転入したのは、2024年2月。昔は、三十五歳の壁
があると言われて、求人数が一気に減るため中高年になってから
の転職が難しいと言われていましたが、時代は変わり、経験者=
即戦力ととらえて、責任者クラスでの転職も活況を呈しています。
私の場合、転職しても入社以来一貫して監視カメラ事業を担当。
履歴書に染められた「監視カメラ」の数々の経験がこうした転職活
動に貢献している反面、それ以外の事業、産業への転職は難しく、
この中小企業診断という資格、また、2024年10月に合格しました
社会保険労務士の資格などを通じて、新たな経験を積み重ねて
いきたいと考えております。
というわけで、今回は、私の社会人活動のベースになっているこ
の「監視カメラ」という事業から通して見る社会について述べてい
きたいと思います。各種経験が豊富な読者の皆様の一興に値す
れば幸甚です。

  1. セキュリティとプライバシー
    この監視カメラの使われ方として、私人としての我々が生活する
    上で一番身近な使われ方が防犯カメラだと思います。皆様が生活
    用品を調達するために利用する小売店舗や、生活の拠点となる
    アパートマンション、遊びに行くテーマパークやリゾート施設など
    あらゆるところに設置されています。
    かなり昔の話ですが、写真を撮られると魂が抜ける、という表現
    をされていたと思います。私見ではありますが、これはカメラという
    よりレンズが向けられて緊張することを例えている表現で、その威
    嚇効果を的確に捉えている表現だと感じます。
    ということで、今は安全防犯の上必要と認知され、そこかしこで
    見ることができる防犯カメラですが、私が社会人に入社したばかり
    のころは、マンションに防犯カメラを入れると検討すると一大事。
    理事会での決議事項であり、審議しますが、プライバシーの侵害
    という声に押されて導入されないことが殆どでした。今や新築分譲
    のマンションではカメラやセーフティボックスなどでセキュリティが
    当然となっていますが。これ、たかだか20年ほど前の話です。
  2. 通信網のデジタル化
    このように、優先されるのが、プライバシーからセキュリティに代
    わってきた日本社会ですが、これで終わりではなく、最近は、また
    プライバシーが重視されてきています。これは、通信網のデジタル
    化、オープン化に伴い、セキュリティ用途で取得した情報が暴露さ
    ることのリスクが大きくなっている裏返しです。
    2011年7月24日に地上波テレビ放送がデジタル化したことに起
    因して、アナログ映像機器の継続開発、生産が高コストとなり、監
    視カメラの世界にもデジタル化、ネットワーク化が進みます。これ
    に伴いインターネットを介した遠隔監視やクラウドシステムが提供
    しやすくなり、その裏返しとして、セキュリティシステムが外部から
    アクセスされやすくなってきました。
    法規制もこのような社会情勢に呼応し変化し、個人情報保護法
    が施行され、既に数回に渡り改正法も施行されています。
    ということで、現在は、セキュリティ<プライバシーと表現できると
    思います。
  3. AIとの付き合い方、向き合い方
    この10年ほどでDXやIoTがバズワードとしてメディアやセミナー
    でのお題目の主役を長らく務めていましたが、この2~3年でその
    座をAIに明け渡した、と感じられます。以前よりAIは存在し、提案
    され、利用を検討されてきましたが、生成系AIの大幅な機能アッ
    プとともに注目のみならず、実活用が進んできています。
    目で見る情報、即ち視覚情報は、人間の五感の中でも80%超を
    占めるといわれています。ということは我々は非常に多くのことを
    「目で見て」判断しているといえ、それが故に、目に代わるデジタ
    ルデバイスであるカメラとそのAI処理にも非常に多くの期待が寄
    せられています。
    生成系AIの普及に伴い、AIの扱いで一番注意が必要な事項、
    「誤りがある前提での活用」が広く一般化し、AIが万能ではないこ
    と、最終的な判断は人間がする、その判断手前の情報整理がAI
    の得意領域であることの理解が進み、製造業を中心に人手不足
    を解消するソリューションとして徐々に社会実装されてきています。
    社会人の第一歩を踏み出したときに担当することとなった監視カ
    メラ。当時は、コンビニや金融機関、焼却炉の中を監視する地味
    な産業でした。当時は、後輩がテレビ会議やテレビ電話といった
    当時最新鋭の機種を担当しているのをうらやましく思っていました
    が、今では十分に最新鋭の産業となり、私の代名詞となりました。
    この経験を士業でもいかしていきたいと思います。

執筆者プロフィール

松田栄治(まつだえいじ): 2023年・中小企業診断士登録。
大手総合電機メーカー、関連会社へ出向二回、外資企業、
国内最大手事業子会社を経て、再度大手メーカーから関連
会社出向。計7社での多様な勤務経験ながらも事業は一貫し
て監視カメラ。旧知の方からは「今はどちらにお勤めでしたっ
け?」から挨拶が始まる。
2024年は社会保険労務士試験合格。新たに趣味としてドラ
ムを始める。士業活動よりバンド練習にいそしむ毎日・・・。