BIZREN☆通信 25号 「今の大学生の特徴から採用戦略を考える」

Bizren会員の皆様、こんにちは。はじめましての方も多いかもしれません。私は普段、私立大学の職員として、学生の職業観を醸成するキャリア教育や就職相談を行うキャリアセンターで仕事をしています。未だに同業の診断士にお会いしたことがなく、自分でも珍しいキャリアを歩んできているなと思っています。そこで今回は私が日々向き合っている今の大学生の傾向をご紹介し、中小企業の新卒採用戦略や新人教育のあり方の参考にしていただければと思います。

Z世代の特徴から見るジェネレーションギャップ

今の大学生はおおよそ1998年〜2002年生まれで、この世代は「Z世代」と呼ばれています。一番の特徴は、生まれた時からインターネットが普及しているデジタルネイティブであるということです。ちなみに私はこの一つ前のミレニアル世代(ゆとり世代)であります。Z世代には特にSNSが身近な存在であり、ネットで調べ物をすることを「ググる」ではなく、Twitterやインスタで利用される#(ハッシュタグ)から「タグる」と言うそうです。

幼い頃から世界中のリアルタイムの情報に触れてきたことで、国際問題の意識や道徳意識も高く、また、リーマンショック後の不況下で育ってきたことから、現実的で実利を追い求め、将来を重視するという傾向が強くあると言われています。私が普段接する学生との会話からも、コスパ意識の高さを感じることがよくあります。彼らの考えるコストは、“お金”ではなく“時間”という軸で捉えられていることが多いようです。例えば、このセミナーに参加することでどのようなスキルが身につくのか、何を経験すれば一番自分の成長につながるのか という視点で物事を考える学生が本当に多いと感じます。自分がやりたいことよりも得られることを優先するあたりに実利主義が垣間見えます。

キャリア教育の潮流

今教育現場ではもっぱらキャリア教育が注目されています。キャリア教育とは、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育(文部科学省より)」で、今の大学生は小中学校の頃から、学校教育の中で職業観を醸成する様々なキャリア教育プログラムを受けてきています。特に、実社会と関わるプログラムは増えてきました。本学でも企業から提示されたリアルな課題に対し、学生たちが解決策を検討し提案するPBL(Project Based Learning:課題解決型学習)を実施しています。参加学生はとても意欲的かつ前向きに取り組むので、企業からの評価も高いです。

学生はこうした実社会における成功体験によってある程度の自信が持て、それが実利主義が相まって、この会社に入れば自分はこのような成長ができるという具体的なイメージが持てる会社を好む傾向にあります。よって、進路選択時にはその企業の研修内容や人材育成計画(ジョブローテーション等)に興味・関心を持つ学生も多いです。

中小企業が新卒を獲得するための戦略

これらの傾向を踏まえ、私が診断士として中小企業にこそオススメしたいのがインターンシップの活用です。インターンシップとは学生が職場に入り込んで就業体験をすることです。今では約8割もの学生が就職活動前にインターンシップに参加しています。

あるアンケート調査によれば、就活生が会社選びで重視することの1位は「社風が合うこと」、また参加したいインターンシップの特徴1位は「現場社員と話せること」という結果でした。これらを体感することができるのが、現場の社員と共に働く就業体験=インターンシップへの参加であると言えます。

大企業は採用人数の母数が大きいことから一度に多くの学生と接触する必要があるため、ほとんどが企業説明会のような一方向型の内容にせざるを得ず、就業体験からは程遠くなっています。一方で、中小企業は少人数でも優秀な学生に選ばれること、つまり量より質を目指す内容で計画が可能です。ただし、中小企業がインターンシップを実施するには、人事担当者のマンパワー不足や準備への負荷が懸念され、実際にはなかなか導入できないケースもあると思います。しかし、人事担当者が大層なプログラムを練り上げる必要はありません。例えば営業同行や社長の鞄持ちのような内容でも良いと思います。リアルな会社の雰囲気を現場の社員から感じ取ることができるインターンシップであれば、学生が得たいと思う経験に合致し、人気も高まるはずです。

インターンシップは進路選択の一歩手前であるからこそ、会社のネームバリューや規模感に捉われず選ばれるため、中小企業が大企業に差別化を図り、早期に優秀な学生と接触するための好機になるのではないかと考えます。今後の新卒採用戦略の一つに、インターンシップの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

上述は私の個人的な見解や主観も多く含まれておりますので、一参考としてお受け止めいただければ幸いです。

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執筆者プロフィール:

中村 彩(旧姓:高橋):2015年10月中小企業診断士登録

国家資格キャリアコンサルタント 保有

本業は私立大学のキャリアセンター職員として、キャリア教育プログラムの企画・運営、指導などに従事。学生起業家サークルの顧問も務める。

趣味は海外旅行。最近はYouTubeで海外旅行記を視聴しながらコロナ後の旅行を計画中。