2024年度活動予定

原則毎月第2金曜(19:00~21:00)に開催し、2022年度入会者を中心に勤務先事例紹介などを発表。

オンライン開催、オンラインと会議室のハイブリット開催のどちらで実施するかは月によって調整。

148回 04月12日(金)
149回 05月10日(金)
150回 06月14日(金)
151回 07月12日(金)
8月休会
152回 09月13日(金)
153回 10月11日(金)
154回 11月8日(金)
12月13日(金) 忘年会
155回 01月10日(金)
156回 02月14日(金)
157回 03月14日(金)

2023年度実績

2023年04月14日(金) 総会、サステナブルブランディング
2023年05月12日(金) 電線とUL規格、電子線照射架橋技術に関して
2023年06月09日(金) 大学の課題を解決するビジネス
2023年07月14日(金) 銀行融資の検証ポイントを理解する
2023年09月08日(金) 収益認識会計基準
2023年10月13日(金) SalesForceでのシステム開発について
2023年11月10日(金) 日本のエネルギー事情とGXに向けた中小企業の打ち手
2024年1月12日(金) 東京都スタートアップ支援施策の全容
2024年2月9日(金) 中小企業診断士と生成AI活用について
2024年3月8日(金) 中小企業における脱炭素経営の必要性と第一歩の進め方

2022年度実績

2022年04月8日(金) 総会、歯科医院におけるものづくり補助金を活用したCT導入の検討
2022年05月13日(金) 会社を辞めずに診断士で稼ぐコツ、教えます
2022年06月10日(金) FATF対日審査と金融犯罪への取り組み
2022年07月8日(金) 住宅リフォーム業界について
2022年09月09日(金) 文書管理とDX、決算短信の読み方
2022年10月14日(金) 人材不足ICT業界救世主、オフショア開発の実態
2022年11月11日(金) 診断士なら知っておきたい著作権の基礎知識
2023年1月13日(金) タダでマスコミを活用!売上向上に向けたプロモーションとブランディング
2023年2月10日(金) 中小企業診断士だからこそしっておくべき本当の経済の話、ほめ達マル秘テクニック
2023年3月10日(金) 人材開発支援助成金と事業再構築補助金グリーン成長枠人材育成計画について

BIZREN☆通信 31号 「 2025年の崖を乗り越えるために 」

はじめに
BIZRENの皆様、こんにちは。今回担当させていただく後藤と申します。 2023年改めて今年もよろしくお願いいたします。せっかくの機会何を書こうかと考えましたが、本業であるDXについて、2025年の崖も近づいてきたこともあり、改めて振り返ったうえで、乗り越えるためにどうすればよいか考えてみたいと思います。


DXレポートと2025年の崖
DXレポートと2025年の崖と聞いて久しいですが、2018年に経済産業省からDXレポートが発表されました。要旨は、既存システムの問題を放置し、DXが実現できない場合に生じる2025年以降の経済損失は、最大12兆円/年(2018年の3倍)に上る可能性があり、いよいよ停滞する日本経済も崖っぷちの状況であるという比喩です。DX実現シナリオでは、複雑化した既存システムについて、廃棄・塩漬け・刷新等を仕分けしながらDXを実現するシナリオとなっており、実質GDP130兆円の押上が期待できるとされます。
既存システムの問題とは何でしょうか。複雑な要因が絡み合って形成されていますが、DXレポートによるとシステム自体の過剰なカスタマイズ、複雑化・ブラックボックス化によるものとされています。
その結果と、事業部門ごとに構築されたシステムは全社横断的なデータ活用につなげられず、経営者がDXを望んだとしても現場の抱える課題を乗り越えることができない現実に直面します。
DXレポートではさらに技術的負債についても言及、解決する手段としてシステムのモダナイゼーション、マイクロサービスへの移行が言及されています。


技術的負債と2025年の崖を乗り越えるためには
DXレポートと2025年の崖はご存じの方も多いかと思いますが、技術的負債については馴染のない方もいらっしゃるのではないでしょうか。結論的には、技術的負債は、ビジネスとIT、事業部門とIT部門の構造的な問題そのものであり、その課題解決こそ崖を乗り越えるために必要であるという示唆を与えてくれます。銀の弾丸はなく、人の問題であるということです。
技術的負債とは、老朽化したシステム、レガシーシステムであることだとよく言われますが、この考え方は技術的負債の本質を突いておらず、システムのモダナイゼーションが特攻薬かのように誤解を生みます。技術的負債の本質は、徐々に複雑性が増していくことで機能追加が困難になるソフトウェアの特性、システム側の現象を負債というビジネス側の言葉を使って表現したことです。

ソフトウェア工学の有名な書籍「人月の神話」より、ソフトウェアには特性があるといい、中でも2025年の崖を乗り越えるヒントが複雑性、可変性、不可視性です。端的には、ソフトウェアは常に外部環境の変化に合わせて変わり続ける必要がありながら、規模に対して非線形に複雑さが増大する特性を持つため、変化が生じるほど、ソフトウェアの累積規模に対してコストが発生するような負債的な性質を持ち、また、そのソフトウェアの特性そのものが一部の方々には非常に理解しにくいというものです。


DXと求められる変化
改めてですが、DXとはDigital Transformationであり、デジタルを活用して提供価値起点でビジネスモデルを変革することです。2000年以前のITの役割は、バックオフィス業務のシステム化が中心でした。それは事業部門とIT部門の関係性そのものであり、IT部門のミッションは安定的なシステム運用でバックオフィスを支えることでした。当時のソフトウェアは一度構築すると変化は少なくそれこそ固定資産のように捉えても大きな問題は発生しません。
以降のインターネットやスマホ革命は、ITの役割を大きく変えました。ITそのものが顧客接点であり、ビジネス価値であり、コアケイパビリティとなる現代社会を生み出しています。そこでは、市場動向踏まえたアジャイル的な変化が、スピード感をもって必要であり、ITに求められることが大きく変わっているといえます。先の技術的負債で述べたソフトウェアの特性の通り、ソフトウェアはビジネス側
から理解しずらい複雑性を持ち、そのことはスピード感をもって取り組みたい事業部門から見て、なぜこんなにできるのが遅いんだ、コストが発生するのだという印象を与え、システム部門からは、ビ
ジネスに貢献するために実施したい課題解決策がビジネス側からは理解されず、さらなる複雑化を進めます。これが組織的な軋轢とさらなるスピード感の低下、DX実現に向けた障壁となります。


さいごに
ソフトウェアそのものがビジネスの価値を生むことは、これからも続いていくと考えられます。私の専門とするマイクロサービス、DevOpsはシステムだけの考え方ではありません。本質は組織論
やいかにビジネス価値を生むために変化に追従するかという考え方のスタックになります。ソフトウェアを正しく理解し、ビジネスとシステム、事業会社とベンダー、経営層と現場、垣根なくお互いが
歩み寄り理解し合うことがDX実現に向けて不可欠と考えられます。

執筆者プロフィール

後藤 光生(Teruki Goto)/2019年9月診断士登録
SI企業に勤務、PjM・アプリケーションアーキテクトに従事。
専門はマイクロサービス/API、クラウド、DevOps。
趣味はBBQ。最近はまっているものはブルーチーズ。
好きな言葉は、「三方よし」。

BIZREN☆通信 30号 SalesForceでのシステム開発について

ているSalesForceでのシステム開発について記載しようと思います。

Sales Forceとは

 まず「Sales Force」という言葉の意味について、インターネットで調べてみると「アメリカのセールスフォース・ドットコム社が提供する営業支援クラウドパッケージソフト」とまるで一企業の商品名を指しているようかのような記載が多いですが、本来その言葉は「SFA(Sales Force Automation):営業力の自動化」という考え方から端を発している言葉です。

 商品の供給が需要を上回り、企業間の競争が激化した昨今の成熟市場におけるマーケティングでは、顧客志向や既存優良顧客の囲い込みが重要となっています。

「クレーム返品のあったお客様に同じ商品を勧めますか。それは怒られるでしょう。」

「野球のグローブを買ったお客様にテニスのラケットを勧めますか。それはバットでしょう。」

個々の営業担当者の知識・技量に依存するのでは無く、組織的な情報収集、戦略立案、支援活動で競争を勝ち抜いて行く、そういった販売活動の組織的な仕組みがSFAということが出来ます。個人技よりも組織力のほうが大切・・・、近代サッカーのようですね。

 SalesForceはそのSFAを実現するためにセールスフォース・ドットコム社が提供している営業支援クラウドパッケージソフトで、インターネットに繋がりさえすれば他に用意するものは無く、ユーザ数に応じた料金体系なので、中小企業でも導入しやすいと言えます。

Sales Forceの特徴

 私が感じているSales Forceの特徴は汎用性が良く練られているということです。SalesForce自体を動かしている開発プラットフォーム(Force.com)がサービス提供されており、例えばSalesForceはSFA機能は主に標準機能で構成されていますが、標準機能を全く使わずにカスタマイズ機能でSFAとは関係ない業務システムを構築することさえ出来てしまいます。

 クラウドサービスの分類である、SaaS、PaaS、IaaSに当てはめてみると、より理解し易いかと思います。SaaSとは「Software as a Service」の略語で簡単に言うとソフトウェアの提供サービスのことです。PaaSとは「Platform as a Service」の略語で簡単に言うとアプリケーション開発のプラットフォームの提供サービスのことです。IaaSとは「Infrastructure as a Service」の略語で簡単に言うとインフラの提供サービスのことです。

SalesForceにこれを当てはめてみると

SaaS:予め標準機能で用意されているSFAのアプリケーションサービス

PaaS:カスタマイズ機能でSFA以外でもアプリ構築できるサービス(Force.com)

IaaS:SalesForceのデータセンター、サーバー、ネットワークの利用

となります。

Sales Forceでシステム開発するメリット

 PaaSであるForce.comの機能は充実しており、特別なこだわりが無ければ大概の業務システムは構築できてしまいます。実際SFAとは全く関係ない業務システムをSalesForceで開発構築していることを目にするケースは多いです。この辺りはセールスフォース社の戦略を感じます。まず一番手広く導入し易いSFAでSalesForceを導入させて、導入後はSFA以外のシステムもSalesForceで構築させて、その会社のシステム全体をSalesForceに置き換えてしまう。ゼロから新たに作り上げるシステム開発(以降スクラッチ開発と呼びます)と比べてSalesForceはコスト面、開発面、拡張性において大きな優位性があり、SalesForceに置き換わる流れは止まらないと感じています。またしてもアメリカ企業に一本取られてしまったように感じます。

 提供されている個々の機能についても不特定多数のユーザの利用に常に晒されていることから、汎用性が高いです。この辺りは村社会的で汎用性・拡張性を軽視しがちなスクラッチ開発とは大きな違いです。

 技術者(システムエンジニア)側にとっても有利な面があります。スクラッチ開発では顧客の環境独自のものが多く、それに依存したスキルは他の顧客環境では転用出来ないことが多いです。それに対してSalesForceのスキルは、他の顧客でもSalesForceを導入しているのであれば転用できることが多いです。いわゆるポータブルスキルというものです。これは顧客側にとっても新しい技術者を入れる場合、教育コスト削減のメリットがあります。

Sales Forceでシステム開発するデメリット

 前述したように独自のこだわりが強いことや特殊なことはパッケージソフトである為、出来ない可能性があります。(大抵の場合は代替案で解決することが多く、そこはSEの腕次第ですが)

 マルチテナント(クラウド上で複数のユーザーがシステムを共有するモデル)である為、処理負荷に制限があり、開発する場合は常に意識しておかなければなりません。

  SalesForceの参考文献はネット上にも多いですが、分かり易いものが少なかったり、英語でしか無かったりします。Sales Forceの学習や理解をするのに時間を要することが多く、効率的では無いように感じます。

印象に残ったもの

 最後に私が印象に残ったものとして、SalesForceの理念の一つでもある「平等(Equality)」の一環ですが、web学習環境のトレイルヘッドや無料の開発環境提供など誰もが気軽にSalesForceが学べ、門戸が広いことがあります。SalesForce自体が業界で後発であった為、このような思想を取る必要があったともいえますが、開発環境・学習環境が有料や整備されていないなどで仕切りが高く、いまいち普及しないパッケージソフトウェアとは大きな差を感じます。

 このことは後発であることが必ずしも不利ではないということを物語っています。後発であるが故の「ゲームチェンジャー」。置かれた状況の不利を嘆くのでは無くチャンスを見出し、「チャンスは最大限に活かす」ということが大切なのだと思います。

執筆者プロフィール

尾崎 利光(おざき としみつ)/2020年11月診断士登録
システム開発会社に勤務。システムエンジニア(SE)で、最近は専らSalesForceでのシステム開発に従事しています。趣味は、子供とブロック遊び(リブロック)

BIZREN☆通信 28号 「 シアトル酋長が大統領に宛てた手紙 」

今回、『BIZREN★通信』を担当させていただく田中勇司と申します。2012年4月の診断士登録とともに、BIZRENに入会させていただきました。コロナ禍でなかなか直接皆様にお会いできる機会がありませんが、どうぞよろしくお願いします。

 以下の手紙は、1854年にアメリカのピアス大統領がネイティブ・アメリカンの土地を買収し、居留地を与えると申し出て、ネイティブ・アメリカンのシアトルの酋長が白人との戦いをやめるために大統領に宛てた手紙と言われています。

 ご存じの方もいらっしゃるかとは思いますが、私は先日ご年配の診断士の方からご紹介いただき、初めてこの手紙の存在を知りました。現在の世界の状況と照らし合わせて色々と感じる点が多かったので、この場をお借りして共有させていただきます。

■シアトル酋長が大統領に宛てた手紙<一部抜粋>

はるかな空は 涙をぬぐい きょうは 美しく晴れた。

あしたは 雲が空をおおうだろう。

けれど わたしの言葉は 星のように変わらない。

ワシントンの大首長が 土地を買いたいといってきた。

どうしたら 空が買えるというのだろう?

そして 大地を。

わたしには わからない。

風の匂いや 水のきらめきを あなたはいったい どうやって買おうというのだろう?

すべて この地上にあるものは わたしたちにとって 神聖なもの。

松の葉の いっぽん いっぽん 岸辺の砂の ひとつぶ ひとつぶ

深い森を満たす霧や 草原になびく草の葉 葉かげで羽音をたてる 虫の一匹一匹にいたるまで

すべては わたしたちの遠い記憶のなかで 神聖に輝くもの。

—————–<中略>—————————–

もし わたしたちが どうしても ここを立ち去らなければ ならないのだとしたら

どうか 白い人よ

わたしたちが 大切にしたように この大地を 大切にしてほしい。

美しい大地の思い出を 受けとったときのままの姿で 心に 刻みつけておいてほしい。

そして あなたの子どもの そのまた 子どもたちのために

この大地を守りつづけ わたしたちが愛したように 愛してほしい。

いつまでも。

どうか いつまでも。

出典【『父は空 母は大地』(寮美千子・編訳 ロクリン社刊)】

※ぜひ全文をご覧ください。https://ryomichico.net/seattle.html

実は、上記の手紙は実在していません。

 この手紙のもととなった演説は、1854年(ペリーの黒船が浦賀にやってくる1年前)にあったとされます。そしてこの演説は、翌年、書簡の形でピアス大統領に送られたとされています。しかし、そのような書簡は存在していません。

 演説の「テキスト」が登場したのは、33年後の1887年です。1854年当時に、教育長や立法を担当していた スミス博士(Henry A.Smith)が「メモ」を頼りに、新聞向けに書き起こしたものです。

 その後、1971年にネイティブ・アメリカンを扱った『Home』という映画が制作されました。テキサスのペリー教授(Ted Perry)が「シアトル酋長のスピーチ」の台本を創作しました。映画制作者がこれをさらに改変し、「ピアス大統領への手紙」という形式にしました。

 1974年、ワシントン州スポーケンで開かれた万博で、この形式の短縮版が展示されています。

■手紙からの気付き

シアトル酋長は土地は私有財産ではなく、人類のものでもなく、地球のものだと言っています。そして、「大地への大罪は将来の子孫に禍根を残す」、とも言っています。もしこのネイティブ・アメリカンの世界観が普遍のものだと、もう少し早く人類が気付いていたら、我々が今日直面しているSDGsやロシアのウクライナ侵攻などの問題は、どのような形になっていたでしょうか。

 また、現在はITの進展により既存の情報を深掘りしていく『情報処理』が急速に進んでいるものの、自然に五感で触れ、そこで得た新たな知見を『情報化』する力が衰えているのではないでしょうか。自然と都市、感覚と理屈など両者のバランスが大事だと思いますが、前者がどんどん駆逐されて後者の割合が増えてきているような気がします。

 今回の手紙を通じて、長期的・多面的・本質的といった診断士として大事な物事の考え方について、改めて振り返るよい機会となりました。

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執筆者プロフィール:

田中 勇司(たなか ゆうじ):

2012年4月診断士登録

千葉県流山市在住。食品メーカーを経て、現在はビールメーカーに勤務。食品小売業向けのトレードマーケティング業務に従事。会社の副業解禁にともない、2021年11月に個人事業主の開業届を地元の税務署に提出しました。

趣味は、ヨガ・スポーツ観戦・お酒(!)

2021年度実績

2021年04月09日(金) 総会、企業支援に役立つオンラインデータベース活用法
2021年05月14日(金) 勤務先事例紹介
2021年06月11日(金) 勤務先事例紹介
2021年07月09日(金) 勤務先事例紹介、2021年新入会員のオンライン自己紹介懇親会!
2021年09月08日(金) 勤務先事例紹介、コロナ禍での企業内診断士の活動
2021年10月8日(金) すぐに使えるコーチングスキル、Microsoft Japan Digital Days紹介
2021年11月12日(金) 勤務先事例紹介、会社によってこんなに違う?管理会計
2022年1月14日(金) ものづくり企業における品質マネジメント
2022年2月18日(金) 脱炭素化の動向について
2022年3月11日(金) ブルーオーシャン戦略の「戦略キャンパス」に沿ったマーケティング活動

ようこそ!企業内診断士ビジネス連携研究会のホームページへ!

企業内診断士が連携し、自らの 枠を超え、幅を広げる ことを目指し活動しています

・多様な業界に所属する会員同士のネットワークを構築できます。

・勤務先の事例紹介やディスカッションを通じて、異業種理解やビジネス現場で役立つ問題解決力が養われます。

・経営診断、補助金申請などの実務が経験できます。実務ポイント取得の機会も豊富に存在!

BIZREN☆通信 27号 「中小企業とブランド戦略」

こんにちは。私は、長らく電機メーカーでブランド戦略の構築に携わってきたのですが、今回は、「ブランド」の考え方が中小企業でも有効か?ということで、「中小企業とブランド戦略」というテーマについて考えてみました。

ブランドとは?

皆さん、「ブランド」というと何を思い浮かべますか?

シャネルやルイヴィトンのようなハイブランド?それとも、アップルやコカ・コーラ、スターバックスなどが思い浮かぶでしょうか?

ブランドという言葉の語源は、中世ヨーロッパで所有する家畜が紛れてしまわないように、自らの所有物であることを示すために押していた「焼き印(brand)」だと言われており、物事を区別するための要素、という考え方から来ています。

しかし、現在では、ブランドは単純に区別をするだけのものではなく、物事やサービスによる評価や価値が蓄積されたものと考えられています。

ブランドの価値

ブランド論の第一人者であるディビッド・A・アーカー教授のブランドエクイティモデルでは、ブランド価値を、①ブランド認知(知っているかどうか)、②ブランドロイヤルティ(ブランドに対する好意や愛着)、③ブランド連想(ブランドの特徴や個性の認識)、④知覚品質(信頼度や品質イメージ)、⑤ブランド資産(知的財産権などの価値)に分類しており、多面的な価値を持つ、無形の資産と考えています。

ブランドコンサルティングのインターブランド社の調査 「Best Global Brands 2021」によると、世界で最も高いブランド価値を持つのはアップルで、そのブランド価値は 4,000億ドル以上と試算されています。ブランド価値には、選好性や価格プレミアムなど、製品やサービスの価値を高めることに直結する効果があり、企業活動に付加価値をつける機能があると考えられています。

ブランド戦略構築のプロセス

ブランド戦略構築にあたっては、まずそのブランドが何を目指し(ビジョン)、何を強みとし(コアコンピタンスやケイパビリティ)、何を実現していくのか(ミッション)という考え方を整理します。

その考え方を、企業活動により体現していくことで、社内外に対して一貫性を持ち、共通のイメージを持つブランドが構築され、ブランド価値が蓄積されていくことになります。

ブランド=知名度だという誤認をされている方がいらっしゃいますが、有名であるかどうかよりも、明確な特徴や一貫した活動と、そこに認められる価値が認識されているかが重要であると考えます。

中小企業は、認知獲得のためにTVCMなどへの大規模な投資は難しいと思いますが、経営の意思が企業活動に直結しやすいという点では大企業に比べて取り組みやく、自社の特徴や強みを明確にし、企業活動を通じて自分たちの価値を高めていくというブランド戦略は取り組みやすい施策なのではないかと思います。

中小企業のブランド戦略成功例

たとえば、山口県で日本酒製造業を営む旭酒造という企業があるのですが、こちらは、積極的な経営改革を、ブランドにつなげて大成功を収めた事例だと考えています。

日本酒市場は、この40年間で約1/3規模へと大幅に縮小しています。その厳しい環境下で旭酒造は、従来からの杜氏制度を廃止しデータによる醸造管理へ移行、生産品目を純米大吟醸酒へ絞り込む等大規模な経営改革に取り組み、地元山口から東京や海外へと展開していきました。

旭酒造は、この経営改革の旗印として銘柄を「獺祭」に絞り込みました。従来の日本酒とは異なるアプローチと共に、その品質や味の評価を、「獺祭」というブランドに蓄積するという考え方です。

「獺祭」は、当初は知る人ぞ知るという銘柄だったものが、現在では純米大吟醸酒の代表的な銘柄として認識されており、非常に高いブランド価値を蓄積しています。

>旭酒造 (https://www.asahishuzo.ne.jp/

ブランド戦略というと、宣伝やロゴなどの見せ方だけが論じられてしまうことが多いのですが、中小企業の強みや特徴を表現するためのツールとして活用し、付加価値を高めていくことができる考え方だと思います。一般消費者向けの商品だけでなく、企業間取引においても何が得意か、というのは発注先を検討する際の判断材料の一つになりますので、中小企業においても、自社がどのように見られたいかを考えてみてもらうと、これまでとは違う事業展開が見えてくるかもしれません。

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執筆者プロフィール:

城 秀利 (たち ひでとし):2013年9月診断士登録。

電機メーカー勤務。ブランド戦略、広告宣伝関連業務に従事。

趣味で、宣伝会議賞というコピーライティングの公募賞に応募していますが、受賞には至りません。

BIZREN☆通信 25号 「今の大学生の特徴から採用戦略を考える」

Bizren会員の皆様、こんにちは。はじめましての方も多いかもしれません。私は普段、私立大学の職員として、学生の職業観を醸成するキャリア教育や就職相談を行うキャリアセンターで仕事をしています。未だに同業の診断士にお会いしたことがなく、自分でも珍しいキャリアを歩んできているなと思っています。そこで今回は私が日々向き合っている今の大学生の傾向をご紹介し、中小企業の新卒採用戦略や新人教育のあり方の参考にしていただければと思います。

Z世代の特徴から見るジェネレーションギャップ

今の大学生はおおよそ1998年〜2002年生まれで、この世代は「Z世代」と呼ばれています。一番の特徴は、生まれた時からインターネットが普及しているデジタルネイティブであるということです。ちなみに私はこの一つ前のミレニアル世代(ゆとり世代)であります。Z世代には特にSNSが身近な存在であり、ネットで調べ物をすることを「ググる」ではなく、Twitterやインスタで利用される#(ハッシュタグ)から「タグる」と言うそうです。

幼い頃から世界中のリアルタイムの情報に触れてきたことで、国際問題の意識や道徳意識も高く、また、リーマンショック後の不況下で育ってきたことから、現実的で実利を追い求め、将来を重視するという傾向が強くあると言われています。私が普段接する学生との会話からも、コスパ意識の高さを感じることがよくあります。彼らの考えるコストは、“お金”ではなく“時間”という軸で捉えられていることが多いようです。例えば、このセミナーに参加することでどのようなスキルが身につくのか、何を経験すれば一番自分の成長につながるのか という視点で物事を考える学生が本当に多いと感じます。自分がやりたいことよりも得られることを優先するあたりに実利主義が垣間見えます。

キャリア教育の潮流

今教育現場ではもっぱらキャリア教育が注目されています。キャリア教育とは、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育(文部科学省より)」で、今の大学生は小中学校の頃から、学校教育の中で職業観を醸成する様々なキャリア教育プログラムを受けてきています。特に、実社会と関わるプログラムは増えてきました。本学でも企業から提示されたリアルな課題に対し、学生たちが解決策を検討し提案するPBL(Project Based Learning:課題解決型学習)を実施しています。参加学生はとても意欲的かつ前向きに取り組むので、企業からの評価も高いです。

学生はこうした実社会における成功体験によってある程度の自信が持て、それが実利主義が相まって、この会社に入れば自分はこのような成長ができるという具体的なイメージが持てる会社を好む傾向にあります。よって、進路選択時にはその企業の研修内容や人材育成計画(ジョブローテーション等)に興味・関心を持つ学生も多いです。

中小企業が新卒を獲得するための戦略

これらの傾向を踏まえ、私が診断士として中小企業にこそオススメしたいのがインターンシップの活用です。インターンシップとは学生が職場に入り込んで就業体験をすることです。今では約8割もの学生が就職活動前にインターンシップに参加しています。

あるアンケート調査によれば、就活生が会社選びで重視することの1位は「社風が合うこと」、また参加したいインターンシップの特徴1位は「現場社員と話せること」という結果でした。これらを体感することができるのが、現場の社員と共に働く就業体験=インターンシップへの参加であると言えます。

大企業は採用人数の母数が大きいことから一度に多くの学生と接触する必要があるため、ほとんどが企業説明会のような一方向型の内容にせざるを得ず、就業体験からは程遠くなっています。一方で、中小企業は少人数でも優秀な学生に選ばれること、つまり量より質を目指す内容で計画が可能です。ただし、中小企業がインターンシップを実施するには、人事担当者のマンパワー不足や準備への負荷が懸念され、実際にはなかなか導入できないケースもあると思います。しかし、人事担当者が大層なプログラムを練り上げる必要はありません。例えば営業同行や社長の鞄持ちのような内容でも良いと思います。リアルな会社の雰囲気を現場の社員から感じ取ることができるインターンシップであれば、学生が得たいと思う経験に合致し、人気も高まるはずです。

インターンシップは進路選択の一歩手前であるからこそ、会社のネームバリューや規模感に捉われず選ばれるため、中小企業が大企業に差別化を図り、早期に優秀な学生と接触するための好機になるのではないかと考えます。今後の新卒採用戦略の一つに、インターンシップの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

上述は私の個人的な見解や主観も多く含まれておりますので、一参考としてお受け止めいただければ幸いです。

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執筆者プロフィール:

中村 彩(旧姓:高橋):2015年10月中小企業診断士登録

国家資格キャリアコンサルタント 保有

本業は私立大学のキャリアセンター職員として、キャリア教育プログラムの企画・運営、指導などに従事。学生起業家サークルの顧問も務める。

趣味は海外旅行。最近はYouTubeで海外旅行記を視聴しながらコロナ後の旅行を計画中。