BIZREN☆通信 2号 「徒然なるままに診断士暮らし」

2019年3月 渡邊哲舟

福岡に戻って半年が経ち、特に目立った活動をするわけでもなくボーっと暮らしているので「チコちゃん」に叱られそうですが、福岡県診断協会の公認勉強会である「IOT研究会」に参加しています。IOTの勉強と診断士の活動に何か役にたつのか等を考える研究会なんですが、なかなかピリッとした活動になっていないな~と感じていたそんなおり、「京都府診断協会が今後のAI時代に対応する診断士の活動内容を研究している」と聞きつけ、IOT研究会のメンバーと2月の初めに参加してきたわけです。

会場は京都の寺町エリアにある「Bnjour!現代文明」。大正時代の京町屋をそのまま保存してイベント会場にしている建物です。

いつものビジネス会議室とは違い、京都らしい雰囲気を醸し出している会場での講習に期待も膨らんで会場入りしました。最初会場がわからず迷いました。この寺町地区は古い建物がそこいらに普通にあり、また景観条例が厳しく建物を建てるにもデザインなどの許可が必要な地区のためこの会場も街に埋もれていました。街全体が古都の雰囲気に包まれて歩いているだけで味わい深い情景です。外国人に人気なのも頷けますね。今度観光でゆっくり来たいです。

講習内容はこれがびっくりする内容で、2日間に分けて5時間の講義と3時間のワークショップだったんですが、長いと感じることもなく、また次回のフォローアップ研修を望む声もあり、大盛況。おそるべし、京都府診断協会のパワー。実際に運営しているのは、「ウィキ京都研究会」IT診断で独立している診断士の先生がいたり企業内のITの専門家がいたりとかなり専門性の高い診断士がいる反面、まったくITの知識はゼロで3か月前から大学のセミナーを受講しAIとは何かを勉強された診断士が講義されたりと非常に活動熱心な研究会でした。

実際の研修内容は「AI時代の診断士の支援法」「身近になったAI」「AIのビジネス応用例」 「AI理論」「AIの実践法」ここまでが1日目の講義。1~3時間目の「AI時代の診断士の支援法」「身近になったAI」「AIのビジネス応用例」は、現在身近にあるAIはどんなものがあるかの紹介(例えばお掃除ロボットや自動車の自動運転やFacebookの画像認識、名刺アプリの自動読み取りなどなど普通の機器に使われているものもAIに分類されるようで、私が知っているのは「AlphaGo」「PONANZA」が囲碁や将棋の名人に勝った話のみでした)。実際、IBMの「ワトソン」に2千万件の論文を学習させて60代の女性患者の白血病を10分ほどで見抜いて適切な治療法を助言するなどビジネス応用例が出てきているようです。また、画像認識によるロボットでの収穫や病害虫のリスク判断など農業分野に応用される例や工業分野では低コストでのスマートファクトリー構築、AI+ロボットで外観検査の省力化、音声認識システムで作業時間短縮とミス低減などが紹介されていました。着実に私たちの身の回りにはAIというかIOTというかこの手の分野の活動が活発になってきています。実用例は多岐に渡っていてここでは紹介しきれない程事例紹介がありました。

続いて「AI理論」「AIの実践法」の講義では機械学習やDeep Learningの説明と仕組みについてかなり技術的な内容を踏み込んでの講義と、実際にAIをつかって企業与信管理の実例などを紹介頂きましたが・・・あまりの難しさに頭がオーバーフローし停止しました。簡単に説明するとビックデータが安価に入手出来る時代がきてIT企業から無料で簡単にプログラミング出来る言語が公開され、解析アルゴリズムもあり内容が良くわからなくてもツールが作成出来る時代なって来ている。今はまだ大手しか活用していないが今後中小企業でも活用出来る時代がすぐそこに来ているようです。息切れしながら1日目の講義終了。この後夕食兼交流会。会場は研修会場の古民家、夜になると昼とはまた違った趣が出てきて非常にムーディーな感じの中、熱い診断士トークがあちこちで展開されるのですが、どこへ行っても診断士は熱い連中ですね。

2日目のワークショップでは和食屋の事例で大手が参入してきて売り上げが低下している状況を、AIを使ってどのように解決するかを4グループに分かれてディスカッション。AIに集客予測をさせる無難な意見から顔認証をさせてお得意様を取り込む、新メニューの開発、労務管理の最適化などいろいろな意見が出てとても参考になりました。

だらだらと書いてきましたが、今回の研修を通じて、AI時代が来たとして結局それは一つのツールとして活用し、クライアントである中小企業が要求する課題解決に繋げるためのスキルを向上させていくことが必要だと改めて感じた研修でした。まあボーっと暮らしてたらこのAI時代あっという間に取り残されるだろうと危機感を強く感じ、明日から頑張ろうと心に誓いながら新幹線の中でビールを開けました。


執筆者プロフィール

渡邊哲舟(わたなべてっしゅう):福岡在住。半導体製造装置商社に勤務。マーケティングおよび商品開発と販売を担当。2008年診断士登録。製品開発や販売支援を中心に活動。マンパワーで運営管理の講師を経験。東京に転勤しBIZRENには2013年入会。趣味はウォーキング。

BIZREN☆通信 1号 「平成終焉BIZRENが向かうところ」

2019年3月 三井善樹

私が診断士登録したのは平成2年4月1日なので、私の診断士人生はまさに平成時代に培われたと言えよう。当時私が勤めていた会社では初の診断士ホルダーとして社内報に写真入りで掲載され、役員からご祝儀も出てもてはやされた。

私の企業内診断士ライフは6年ほどであった。江戸時代の剣術家の宮本武蔵は他流試合と称して名だたる剣豪に試合を挑み、守破離の精神から型にはまらない二刀流を編み出し、武術以外でも彫刻や書道にも通じ「一理に達すれば万法に通ず」という言葉を残している。当時五輪書に心酔していた私は自らを宮本武蔵になぞらへ、会社の外に他流試合を求めた。診断協会ではコンピュータ研究会他様々な研究会に所属した。見るもの聞くものが新しく、すべての出会いが楽しく、むさぼるように新しい知識と人脈を吸収した。副業においてはマンパワーの講師のほか、産能大の添削講師、書籍出版活動に参加して、企業内にいながら自身の可能性を追求した。

しかし、職場の同僚や先輩たちの目は冷ややかだった。営業現場では根性論が蔓延り、挙句の果て古参から「お前はいいよ、会社辞めても食っていけるもんな」などと揶揄されることもあった。一方、会社から一歩出て様々な診断士の会合に参加すると、情報部門の若手診断士は珍しく諸先輩にかわいがられ、そして早く独立するよう促されもした。当時は職場も診断士の世界も資格取得は第二の人生の切符のような考え方が主流であった。まもなく、流れに任せて私も独立したのであるが正直これでよかったのかと今でも思うことがある。

あれから30年の歳月が流れ、いま私は自身のコンサル会社経営しながら、海外コンサル会社の執行役員として再び企業内診断士でもある。企業内診断士ライフは受験者の平均年齢が若くなるにつれ長くなっている。その結果企業内診断士そのものに存在理由が求められるようになった。仮に将来独立するにしても、あまりある時間を安寧とした第2の人生を思い描き、ひたすらそれを待っていてはならない。企業人として戦略性を高め人生を自ら切り開く力を付けなければならない。不惑の企業内診断士としてその存在意義を示す時が来た。

もう10年も前のことであるが、私はJICAの仕事でモンゴルに来ていた。ちょうど相撲の朝青龍が日本パッシングで引退に追い込まれたころで、JICAモンゴル支局から夜の外出は控えるよう戒厳令が出ていた。それでも酒好きの私はその日独りバーで酒を飲んでいて2メートルくらいの巨漢に頭突きを食らったことがある。同じ人間の頭に変わりはないと一撃を受ける瞬間に目をそらさなかったのが功を奏したのか、それ以上の諍いにならず事なきを得た。国技の相撲で精彩を欠き、リーマンショック以降日本人は政治も経済も、どこに行っても誰もが弱かった。情けない日本が悔しくてそのような態度をとったのかも知れない。一方、中国企業や韓国企業は国家戦略のもと勢力を広げ、モンゴルにおいてもやりたい放題に見えた。このままでは日本企業は彼らに負けてしまう。莫大な資金力を背景に急成長する彼らと対峙して、日本企業は互いに技術力を結集しなければ勝つことはできない。

帰国後しばらくして企業内診断士連携研究会を立ち上げた。一握りの診断士が日本経済を救えるわけがないのだが何かせずにはいられなかった。時は過ぎ、最近オープンイノベーションという言葉を見かける。企業の枠組みを超え、革新の輪を広げることで国の発展にまでつなげる。それを促進するために企業と企業のつなぎ人が必要となる。経営戦略のスキルだけでなく、ネットワーキング力が要求される。まさしく企業内診断士が適任ではないか。

BIZRENは企業内診断士が活躍できる場を提供することを目的として、これまで色々な活動を行ってきた。定例会の「しゃべコラ」は、プレゼンターが自身の仕事ぶりと課題を発表し、それを題材に参加者が解決策出す。いろいろな業界のアイデアを飛び交い、さながら他流試合である。他にも、確定申告のための税務知識の勉強会、企業訪問不要の補助金申請代筆業務、JICAやAOTSのプロジェクトへ参加、参加者が運営する無償の実務従事など多岐にわたる。会員は皆企業人なので、出張や転勤、海外勤務はよく聞く話だ。本業が忙しく時として定例会に参加できないこともある。BIZRENではchatworkをインフラとして活用しているので、福岡や上海に転勤してもプロジェクトに参加できる。定例会に参加できないときはZOOMでしゃべコラに参加も可能だ。今後の計画は、働き方改革を迎え副業をサポートするビジネスマッチングや報酬決済システムを検討中だ。後者はすでに一部で採用しており報酬の受け取りや研修費支払いにBIZコインで決済できる。BIZRENという舞台で、企業内診断士が思う存分パフォーマンスを発揮している姿を望んでやまない。


執筆者プロフィール

三井善樹(みついよしき): 企業内診断士ビジネス連携研究会(BIZREN)代表幹事。1994年に国内情報機器メーカーを退職し、経営情報戦略コンサルタントとして独立。2005年から経営革新と販路開拓を一体化したビジネスレップ事業を開始。幅広い人脈を通じて、資本連携、技術連携、販売連携などこれまで100社以上の連携プロジェクトを推進。
専門は経営工学。趣味は料理。