BIZREN☆通信 22号 「わらしべ長者」

2021年3月 林順一

2020年5月に診断士登録をしました林順一です。60歳までリース会社の主に海外部門で働き、今は週のうち半分は中小企業で経営企画系の仕事をし、半分は診断士活動を行っております。

今回は、これまで最も楽しめた仕事についてお話したいと思います。1997年4月、3回目の海外駐在としてタイの現地法人に赴任しました。しかし、同7月2日、海外投機筋の売り攻勢に耐え切れず、タイ・バーツがドル・ペッグ制から管理フロート制に移行、その後30%を超える暴落となりました。アジア通貨危機の始まりです。

多くのタイ企業・投資家は、為替リスクを気にせず、金利の安いドルを借り、バーツで運用していたため、債務は膨らみ、国全体が不良債権にまみれ、銀行の融資は止まり、解雇が続き、経済は壊滅状態となりました。

我々リース会社も原則、新規契約をストップ、既存契約の回収に専念、業界全体での軽度の遅延を含む不良債権率は30%~40%程度ではなかったかと思います。現地法人唯一の日本人駐在員として債権回収、資金繰りに胃の痛くなる日々は続きますが、それも1年経つとやることがなくなってしまいました。常々赴任先では少なくとも一つ、「これをやりました」と言える仕事を残したいと思っていましたので、新規事業としてメンテナンス付き自動車リースの事業化を企画しました。9ヵ月間の市場調査、修理工場との交渉、メンテナンスコストの積算、取引先のご協力を得た試験的なリース契約の運用も経て、企画書を書き上げ、シンガポールの役員のゴー・サインをもらい本社役員会の承認を取ることができました。しかし、条件が付いて、ゼロから事業化を進めると収益化に時間がかかるので、現地の会社を買収せよ、というものでした。

そこから買収先探しが始まり、地元の自動車リース会社、レンタカー会社等にあたるものの、成果は上がりません。そんなある日、本社の営業推進役から、その方の出身元の化学繊維メーカーがタイのサイアム・セメント・グループ(SCG)と合弁会社を立ち上げ、測定機器のリースをしたいと言っているので訪問してきてほしいとのメールが入りました。バンコクから車で3時間のラヨーンにある合弁会社に行って、話を聞くと、短期間だけ機械をレンタルしたいので在庫はありますか、というような話で、予想通り空振りです。しかし、往復6時間が無駄になると思い、ダメもとで他に設備などリースするものはありませんかと聞くと、設備は借入、自動車はサイアム・セメント・グループ内のリース会社から借りている、とのこと。

サイアム・セメント(SGC)は、1913年に国王ラーマ6世により設立されたタイ王室財産管理局が出資する王室系名門企業、建設資材、製紙から石油化学まで手広く事業を行い、トヨタ、三菱電機、日本製紙、クボタなどとの合弁会社も待つ、タイ最大のメーカー系複合企業グループです。その歴史と産業界での地位から、日本でいえばトヨタと日本製鉄を合わせたような会社です。

そんな大企業が子会社を売らないよなと思いつつも、会社に帰って、タイ人の役員に、ちょっと話を聞きに行きたいんだけど、SGCに知っている人いる、と聞くと、なんと彼は前職はSGCで、すぐに元同僚に連絡をとってくれました。そして、なんとSGCは、その自動車リース子会社の売却を検討している、というではありませんか!早速、グループ企業担当の部長に会いに行くと、エジソンが興したアメリカの総合電機会社のファイナンス子会社と交渉中でしたが、何とか入札に参加させてもらいました。結果は、金額に差がありその米系会社が落札。しかし、6か月後その部長からまだ興味はあるか、との連絡。米社はリース資産は買うが、社員は引き取らないことが、暗礁に乗り上げた理由のようです。そこからは、競争相手もなく良い条件で2001年8月買収、私も社長として乗り込み、2003年4月の帰国まで経営統合作業を進め、買収当初より黒字、現在ではタイでの主要事業の一つになっています。

この経験を思いだすたびに、私は昔話「わらしべ長者」が頭に浮かびます。たった一本のわらしべから→みかん→織物→馬→長者の家、と交換を重ね長者になるというお話ですね。

空振りに終わりそうなメールから、ダメもとで話をつないでゆくと幸運の女神が何度か下りてきて、数十億円の利益につながった、ということですね。幸運の女神には前髪しかありません。躊躇せず、前髪=チャンスをつかみましょう。

といっても、こんなラッキーなことは、長いビジネス経験で一度しかありませんでした(笑)。他のチャンスは逃していたのかも。

執筆者プロフィール:
林順一(はやし じゅんいち):2020年診断士登録

横浜市神奈川区在住。
専門分野:M&A(戦略立案からデューデリ、契約、PMIまで)、事業承継、海外進出、中核人材獲得支援など。
休日:毎週走っていましたが、足底筋膜炎でお休み中。
どなたか、よい治療法、クリニックを教えて下さい。

BIZREN☆通信 21号 「アトキンソンさんにモノ申す?」

2021年2月 磯島康郎

私には昨年9月菅政権が発足した時からずーっと気になっていることがある 。それはデービット ・ アトキンソンさんの存在だ。 政府「成長戦略会議」 のブレーンの一人。 英国オックスフォード大学で日本学を学びゴールドマンサックス時代にバブル後の日本経済をアナリストとして見つめてきた人物だ。 現在は寺社仏閣等の修復を手掛ける小西美術工藝社という中小企業の社長でもある 。 私は、 以前から彼の著作「観光立国日本」 「日本人の勝算」 などを愛読していた。

中国の属国になるか
私が診断士の養成課程を卒業するときに、 出版社に勤める知人から 「これから診断士になるなら 、 ぜひ読んでおいた方がいい本があるよ 」 と言って手渡されたのが「国運の分岐点」という本である 。 サブタイトルには「中小企業改革で再び輝くか、 中国の属国になるか」 刺激的な言葉がある 。 この本の目次は以下の通り

第1章 「低成長のワナ」からいかにして抜け出すか
第2章 日本経済の最大の問題は中小企業
第3章 この国をおかしくした1964年問題
第4章 崩壊しはじめた1964年体制
第5章 人口減少・高齢化で「国益」が変わった!
第6章 国益と中小企業経営者の利益
第7章 中小企業 護送船団方式の終焉
第8章 中国の属国になるという最悪の未来と再生への道

彼がこの本で書いていることとほぼ同じ内容が未来成長会議で話され昨年12月の実行計画の第7章に落とし込まれている。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/seichosenryakukaigi/dai5/siryou1.pdf
彼の著作の書かれている内容は極めてロジカルで解り易い。日本の戦後復興は、 日本人の勤勉さと日本人は思い込んでいるが、 単純に人口が爆発的に増えたからGDPも増加した。GDO=人口× 生産性だから人口が減少している今の日本では生産性を高めないとGDPは維持すら できない。 だったら生産性を上げるしかない。 中小企業は大企業の半分しか生産性がないから 合併やM&Aを促進して規模を大きくしてGDP=国力を保つしかないでしょ …ということだ。確かにお説ごもっともで突っ込みどころがないように見える 。しかし …しかしである 。 彼の主張に私は “そこはかとない ”違和感を感じている 。 皆さんはアトキンソンさんの主張が政府に影響力を持ち実行されていくのをどの様に感じていらっしゃるでしょうか?

記憶にないアメリカの街
私はアメリカ赴任時代にオバマ氏とヒラリー・ クリントン氏が民主党の大統領候補の座を争っていた予備選挙キャンペーンに帯同して全米中を取材したことがある 。 NYやロス、 サンフランシスコ 、 マイアミ 、 ボストンなど海沿いの町は覚えているのだが地図の真ん中にある 街も 多数訪れたが全く記憶に残っていないのである 。 それはなぜか? どこに行っても同じチェーン店やモールしかなかったからである 。きっとそ れらの町にも私が訪れる 10年以上前には個人経営の個性豊かな食堂やレストランがあったであろう 。 生産性を求めると規模の経済原理が働き多様性が失われてしまうのは仕方がないことかもしれない。

私は、 アトキンソンさんの主張が間違っているというつもりはさらさらない。 生産性向上はもちろん指すべきだと思う 。一方で“多様性” を失ってよいかというとそうではないと思う 。このまま 、 突き進むと 日本中どこに行ってもユニクロをニトリしかないような町がいたるところに出現してしまうのではないかと 危惧している 。 私は2010年民主党政権下で作成された中小企業憲章を思い出した。 診断士の一次試験の過去問にも出たことがあるので記憶にある方も多いだろう
https://www.meti.go.jp/committee/summary/0004655/kensho.html
憲章の冒頭部分には以下のような記述がある

「中小企業は、社会の主役として地域社会と住民生活に貢献し、伝統技能や文化の継承に重要な機能を果たす。小規模企業の多くは家族経営形態を採り、地域社会の安定をもたらす。このように中小企業は国家の財産ともいうべき存在でる。 」

妻の友人が昨年4月、 緊急事態がまさに発出されるタイミングで奥沢駅の近くにカフェをオープンした。 50代半ばの子育てが一段落した主婦が、 これまで母親として子供に食べさせてきた安全で美味しい料理を家族以外の人にも食べてもらいたい 。 自分の夢をかなえるため美と健康にこだわったメニューを提供しコロナ禍でも 地元民に愛され大検討している 。

私は診断士2年目で大した実績もない。 ただ3年目を迎えるにあたり 、 右手には成長戦略会議の実行計画を携えながら左手には、 中小企業憲章の“魂”も持ちながら診断士活動をしたいと思う 。

執筆者プロフィール:
磯島康郎(いそじま やすお) :2019年5月診断士登録

㈱フジテレビジョン 編成制作局 著作権契約部勤務
職歴: 「情報プレゼンターとくダネ ! 」「ノンストップ! 」 プロデューサー
ニュースサイト FNNプラインオンラインチーフプロデューサー
趣味は全身EMSスーツで愛犬と散歩

BIZREN☆通信 20号 「補助金って役に立つ」

2021年2月 城ヶ崎寛

悩んでいませんか?
皆さんは本業を持ちながら中小企業診断士らしい仕事をして社会貢献したいと考えていませんか?また、せっかく苦労して取得した中小企業診断士の資格を維持するために実務従事ポイントを獲得するのに苦労されていませんか?その解決策となるのが補助金申請支援です。中小企業が設備投資をする資金を政府が支援する制度ですので、中小企業から人気もありますし、支援する人が求められています。しかし、勤務しながら、しかも中小企業の経営支援の実務経験がない自分でも大丈夫なのか?そう思われている方も多いのではないでしょうか?。

ものづくり補助金は優良企業しかもらえない

「ものづくり補助金」の存在を知った企業が、補助金がもらえたら、この事業に取り組もうという、補助金ありきの事業計画を立案するための支援を依頼されるケースがあります。残念ながらこうした企業では、補助金申請に真剣に向き合うことができず、不採択に至るケースが多くあります。

モノづくり補助金 通称「もの補助」では、本年は、時給が地域別最低賃金を+30円以上上回り、給与支給総額が毎年1.5%以上の上昇を従業に確約しなければ申請できません。従業員30名で、給与支給総額が1億円の企業では、毎年150万円以上の給与支給総額を上昇させる必要があります。毎年付加価値額も平均3%増加が求められます。

また、本年1兆円以上の国家予算がつき、事業再編に取り組む企業を対象に、中小企業の場合は最大6000万円まで補助金の出る事業再構築補助金が注目を集めています。こちらも毎年付加価値額も平均3%増加が求められます。

コロナ対策の給付金とはずいぶん考え方が違い、事業計画の優秀さと、投資対効果の大きさが重要となります。

企業に喜ばれる

補助金の獲得は、設備投資を支援してほしい中小企業からは非常に喜ばれます。採択を支援できると中小企業診断士としての仕事としてやりがいがあります。

企業内診断士でも取り組める

こうした意欲的な企業の支援に取り組む元気のよい中小企業の事業計画策定を支援し、中小企業に貢献して、実務従事ポイントをゲットできるのが「補助金太郎」です。Bizren会員であれば、参加資格があります。補助金初心者でも、ベテランのプロジェクトマネージャーのガイドの下、最終検査を受け持つチェックマンの厳しい指摘により、補助金申請まずは、補助金初級コースを受講して模擬代筆に取り組んでみましょう。きっと企業内診断士でも本格的な中小企業支援の一端をになう体験を得られるはずです。

執筆者プロフィール:
城ヶ崎 寛(じょうがさき ひろし) 2008年診断士登録

外資系コンピュータメーカーを出発点に、約30年間IT業界での業務に従事。主として、営業及び研究開発・システムインテグレーションに従事。2016年独立開業 2019年 株式会社ワールド・ビジネス・アソシエイツ 理事 として、外務省ロシア、JICAインド、JICA南アフリカの案件に従事。

趣味は、水泳と週に1回の焼酎

BIZREN☆通信 19号 「気持ちだけでも海外旅行」

2020年10月 大塚直也

新しい生活様式から半年

新型コロナウィルスの緊急事態宣言が発令されてから早くも半年が経ち、気がつけば上期もあっという間に過ぎていきました。業界によって程度の差はあれど、大なり小なり影響を受けて気づきの機会が多い半年だったのではないかと思います。また、プライベートでは今年のGWや夏休みは、旅行の計画をしていたものの中止を余儀なくされた人も多いと思います。実は私も、超がつくほどの旅行好きで、学生時代からバックパッカーとして、どちらかというとマイナーな国(僻地?!)を旅してきた方です。

海外旅行に行けないからこそ

そこで、今回はこれまで渡航した国の中から、いくつかをピックアップさせていただき、気持ちの中だけでも旅行気分を味わって頂ければ、幸いです。また、気になる国や将来旅行予定がありましたら、お気軽にお声かけ頂けると嬉しい限りです。

【これまでの渡航国一覧】

アジア:韓国、中国、台湾、香港、フィリピン、タイ、マレーシア、ブルネイ-ダルサラーム、カンボジア、ベトナム、ラオス、インドネシア、インド、バングラデシュ (14ヵ国)

南米:アルゼンチン、パラグアイ、チリ、ボリビア、ペルー(5ヵ国)

北米:アメリカ、メキシコ、キューバ(3ヵ国)

欧州:トルコ、ギリシャ、スペイン、イギリス、アイスランド、ドイツ(6ヵ国)

アフリカ:南アフリカ、スワジランド、タンザニア、ナミビア、ボツワナ、ザンビア、ジンバブエ(7ヵ国)

合計 35か国

(1)ボリビアのウユニ塩湖

少しベタではありますが、学生時代に40日以上を旅した南米のハイライトの一つ。乾季は水がなく、塩が地面を覆い真っ白になり、遠近感がなくなることからトリックアート写真を楽しめますが、雨季は水が張り、「水位が2センチ前後」「雲が少しだけある」「風がない」の3条件が揃うと、天国にいるような鏡張りになります。また、新月の時は、上も下もプラネタリウムばりの星の世界となるようです。運よく条件がそろうように、行かれる際は日程に予備日を設ける余裕のあるスケジュールがおすすめです。

(2)南アフリカの喜望峰

教科書に出てきたことで名前は聞いたことある方も多いと思いますが、アフリカ南端の岬です。アフリカというと暑いイメージがありますが、そんなことはなく、喜望峰近くではアフリカペンギンもいます。喜望峰へ行く際の起点となるケープタウンには、テーブルマウンテンという文字通り、真っ平らな山があり、そこからの夕日とともにおすすめです。

(3)アイスランドの氷の洞窟、オーロラ、シュノーケリング

最後の一つだけ違和感があるかもしれませんが、どれもアイスランドでは冬に楽しめます。といっても、シュノーケリングするのはドライスーツを着て、北アメリカとユーラシアプレートの間の幻想的な場所です。気になる方は「シルフラの泉」で検索ください。そして、アイスランドのおすすめ理由は、他のオーロラが見える国に比べ、そこまで寒くなく、冬でも観光アクティビティが多いこと。名前は寒そうな国ですが、実はハワイと同じく火山島で地熱により、他の北欧のように比べ10℃以上温かい中で、夜のオーロラ観察を楽しめます(とはいえ氷点下ではありますが)。地熱発電が盛んで、ブルーラグーンで有名なシリカの温水プールもあります。

(おまけ:おすすめ書籍とひとり言)

最近読んだ書籍の一つに「現代経済学の直観的方法(長沼伸一郎)」があり、経済学を感覚的に理解するという意味で、良書だと感じたことから、共有させていただきます。ブロックチェーンの概念もわかりやすく記載されており、目から鱗でした。そして、読みながら感じたこととして、資本主義は市場拡大が前提となっており、設備投資と大量消費により経済が動いていました。しかし、近年は極端な気候やプラスチックのごみ問題などで環境負荷が注目され、サーキュラーエコノミーやSDGsなど、資本主義と正反対に見えるキーワードが出てきています。今後、これらがどう両立していくのかで、日本を含めた世界の経済情勢は大きく左右され、中小企業を含めた企業活動も影響を受けるのかなと考えていました。(最後に少しだけ診断士らしいネタを。。)

執筆者プロフィール:
大塚直也(おおつか なおや):2017年診断士登録

本業は総合化学メーカーでこれまで営業、マーケティング、新規事業検討などに従事。
趣味:国内外旅行、マラソン(最近はジョギング)、ベランダガーデニング

BIZREN☆通信 18号 「お金の寿命も延ばしたい」

2020年9月 宮司和幸

時価総額2兆ドルの一方で・・・

先日Apple社の時価総額が2兆ドル(約210兆円)を超えた。東証市場一部全社(約2,100社)の時価総額合計が約600兆円であるから、Apple社1社でその3分の1の価値があるとマーケットで評価された。今や世界のトップ企業は、GAFAをはじめ米国や中国勢が大半を占めているが、バブル期の1989年、世界の時価総額上位50社にうち、実に32社を日本の企業が占めていた。現在トップ50に入るのはトヨタ自動車1社だけで、日経平均株価は、1989年12月29日の史上最高値38,915円の約6割の水準で推移している。

家計の金融資産は増えている?

そうした中でも、日本の家計の金融資産は1,800兆円まで増加し続けているが、その半分は現金・預金が占めている。これは欧米の状況とはかなり異なり、特に株式や投資信託が占めるシェアは約15%と低く、金融資産の額は増加しているとはいえ、その伸び率は欧米と比較して低い原因ともなっている。

日本で、株式投資をしたこともないし、関心もないという人は約7割で、その主な理由は「分からない(難しい)」、「怖い」、「元本を減らしたくない」等があげられる。少子高齢化や人生100年時代が本格化する中、今後の年金の水準は不透明であり、健康だけではなく、自らが保有する資産が死ぬまで尽きないように「お金の寿命も延ばす」ことは、老後不安を払しょくするのに非常に重要となっている。

資産形成への取組み

そのための自助努力を少しでも進めたいという思いから、「貯蓄から投資(資産形成)へ」という掛け声の下、20年以上も前から金融関係者は多くの取組みを行ってきた。現在の金利で100万円を5年間銀行に預けても、利息は1万円にも満たない。それならば、リスクは多少あるにしろ株式をはじめ多様な商品に資産をバランスよく振り分けた方が得られるものは大きいというものである。

ただ、老後の備えを退職金をもらってさあ始めようと思っても極めてハードルは高い。理想は現役の時から、日常的に使うお金は現預金、もしもの備えは保険、将来の準備は株式等とバランスよく資産形成を行うことに慣れておくことだろう。その中で職業柄、よく株式投資のことについて聞かれるのでその際の回答ぶりを紹介したい(あくまでもプライベートのやりとりです)。

まずは漫画から?

最もよく聞かれるのは「よく分からない」だが、その際は「インベスターz」という漫画をお勧めしている。東大受験をテーマにブレイクした「ドラゴン桜」と同じ漫画家の作品で、全21巻と少し長いが、かなり読みやすい。そうすると大凡「そんなことはいいから、とりあえず何をしたらよい?」と続くのだが、確定拠出年金(DC)を行っていないのであれば、まずそれを勧めるし、行っているのであれば、対象商品を預金だけではなく少しずつでも投資信託等に振り分けることを紹介している。DCは、拠出分の所得控除があるので、それだけでも非常に魅力的なものだと思う。

3つのキーワード

また、「何を買ったらよい?」というのもよくある質問である。もちろん個別銘柄や商品を答えることはできないが、趣味程度であれば、「自分が好きな企業のことを調べてみたら?」と答えるが、将来のために本格的に準備しておきたいということだと、「長期」、「積立」、「分散」という3つのキーワードを伝える。要は、長期にわたり、こつこつと決まった額を、できるだけ異なる商品に投資していくことが有効ということである。運用の成果は、保有期間が長いほど、また、例えば、国内と海外、株式と債券等できるだけ多様な商品に分散するほど、高くなる傾向がある。

自分で商品を選ぶのが難しければ、仕組的にそれが確保され、かつ、非課税でもある「つみたてNISA」から始めるのがよいであろう。さらに、定年後、収入が不足する分は資産を切り崩して補填しつつも、しばらくは資産形成も続ける方がお金が尽きるまでの期間は長くなりやすい。

中小企業の応援

もちろん資産形成だけがお金の寿命を延ばす唯一の方法ではない。生活のレベルをいきなり変えるというのはかなり難しいだろうが、できるだけ支出を抑えるというのも一つの方法である。また、年金以外の収入を得るために、できる限り長く働くというのは、最も有効だし、確実だと思う。中小企業はそうした受け皿にもなりやすいのではないかと考えており、その応援はずっと続けていきたい。

執筆者プロフィール:
宮司 和幸 (みやじ かずゆき):2019年5月診断士登録。
証券・金融・商品関係の会社に勤務。現在は広報・IRを担当。趣味は、スカッシュ、サックスフォン、旅行等いろいろあったが・・・現在は3歳と6歳の男の子の育児に奮闘中。目下の課題は、自由時間の確保。

BIZREN☆通信 17号 「テレワークからポストコロナを考える」

2020年8月 増渕健二

<コロナ禍と働き方>

8月上旬時点で、各地過去最大の超えるコロナウイルス新規感染者が出ており、まだまだコロナ禍の終息の兆しが見えない状況かと思います。西村経済再生担当大臣からも「テレワーク7割の推進」を経済界に要請しており、首都圏の会社を中心に今後もテレワークの推進は続くのではないでしょうか。

筆者も社内のIT環境が整ったことで、4月より完全在宅勤務となっており出社せず、今日この時点も自宅でテレワークを行なっております(私物整理のために1日だけ出社が許されましたが、出社時間が細かく管理されており、他の社員との接触は禁止されておりました。)。ウイルスが弱毒化ないしは感染者が急激に減る、またはワクチンや治療薬がすぐ実用化されない限り、年内はほぼテレワークとなる予定です。

<中小企業のテレワーク状況>

筆者のように、多くの大企業ではテレワークの推進が行われておりますが、中小企業ではどのような状況でしょうか。以下、デル・テクノロジーズ株式会社(8月1日よりデル株式会社とEMCジャパン株式会社の合併により社名変更)による、「中小企業のテレワーク導入状況に関する調査結果( https://blog.dell.com/ja-jp/survey-telework_20200729/)」を参考にしながら確認します。

まず、テレワーク導入率の推移についてですが、3月時点の13%から7月時点では36%に上昇しています。これは4月上旬に緊急事態宣言が発令され、中小企業もテレワーク意向が一気に高まったためだと考えられます。業種別で見ると、「情報通信業」が最もテレワーク導入が進んでおりますが、「建設業」、「製造業」などは導入検討をしていない割合が多いことがわかります。

「製造業」、「建設業」は物理的な「現場」が業務の中心にあるため、テレワーク導入がどうしても難しいことが原因のようです。

また、導入意向について見ると、4割以上の回答者がテレワークに「全く関心がない」または「あまり関心がない」ことがわかります。

<テレワークの未来と診断士にできること>

以上の調査結果から、中小企業のテレワーク状況は「2極化」が進むと言えるのではないでしょうか。非対面型業務が多い情報通信業はさらにテレワーク推進への投資が進む一方で、対面型業務や現場型業務が多い業種ではコロナ前の働き方を今後も継続する可能性が高いと言えます。

診断士として、中小企業からテレワーク導入の相談が来た場合は、こうした状況を踏まえた助言が必要となります。テレワークのための労務管理からIT投資、また非対面型の営業戦略立案など、幅広い視野でバランスを見ながらトータルコーディネートできるスキルやノウハウを持っていることは、中小企業診断士としての強みと言えるのではないでしょうか。

<ポストコロナに向けて>

コロナ禍が終息しても、場所と時間に縛られず働けるメリットからテレワークを継続する企業は多いのではないかと思います。テレワークが「ニューノーマルスタンダード」となることで、様々な課題点が表出すると思われます。例えば、採用面ではテレワーク可能職種に人気が集まり、テレワーク困難職種の人材不足が加速することが予想されます。一方、テレワークだと、社員間で顔を合わせる機会が少ないことでのコミュニケーショントラブルも発生しやすいと言えます。

私自身もITハードウェアメーカーとして、中小企業診断士として、こうした課題解決の支援により注力したいと思います。

執筆者プロフィール:
増渕健二(ますぶちけんじ) 2017年6月診断士登録

外資系ITハードウェアメーカー勤務の企業内診断士。現在は完全在宅勤務で、インサイドセールとして従事。0から1を作ることに興味・関心があり、診断士としては創業支援や新規事業開発支援、勉強会の主催を行なっている。趣味はランニング。横浜市生まれ横浜市育ち、東京中央支部所属。

BIZREN☆通信 16号 「コロナ禍の向こうに何を創る」

2020年4月 稲林豊太郎

外出自粛の日々
在宅勤務で、ネット会議や、面談の延期や中止連絡。そんな中での時差通勤、やむを得ない外出。本当にご苦労さまです。明かるいテーマにしたかったのですが、この時期、コロナ禍抜きには語れず申し訳ありません。

売上ゼロで倒産多発・経済大混乱時代を生き抜く覚悟を
中小企業は、2~3か月の資金しか持っていないところが多い。4月にストップすれば6月~7月に手元資金が無くなります。この恐さ感覚が、大企業内の診断士には判りづらい。
4月も半ばを過ぎ支援策がやっと出てきて、内容面も幅広いですが、申請に対応する処理スピードの遅さが問題です。医療も同じですが、この国はプロセス管理が苦手です。
在職していたガス・リフォーム会社から電話があり、家庭用はガス量が前年比伸びており、業務用(飲食、学生寮、観光施設)大幅ダウンとのこと。今後の集金を心配していました。超優良企業で心配はいらないですが、「9月末まで、月ごと、用途別販売量見込みを作成、怖がらず悪い数字を直視せよ、行動策を具体的につくって、見込差異・変化見逃すな。不安感は力にならない」と応答したところです。

落ち着いた先の異質な社会を少しでも見通しておきたい
診断士としては、「PEST分析」準備をしておくべき時と感じています。医療援助や薬品開発を梃に米中間の覇権争いが激化、東南アジア、中東、アフリカへの勢力図に変化があれば、国際的なサプライチェーンが変化し、日本企業の影響はどうか。IMFの世界経済見通し2020年-3.0%、2021年5.8%回復(4月20日発表 実質GDP、年間増減率%)
0000年米国  ユーロ圏  日本   中国  インド
2020年 -5.9  -7.5   -5.2   1.2   1.9
2021年  4.7    4.7    3.0   9.2   7.4

筆者は原油価格落ち込みと変動の影響、日本の輸入原価は下がりますが、中東の金融力低下、米国、露等の産油国景気悪化が長引くバランスの悪さは心配です。

テレワーク導入、IoT化は加速
技術上も、規制的にも課題はありますが、このコロナ禍が、唯一残す“福”だろうと思います。労働時間管理の問題や、ネット環境未整備の場所、情報セキュリティと、いろいろありますが、コストより何より安全優先の中で便利さを学んだ人間の力は大きい。
「うちは現場仕事で」という声もありますがセンサー、IoT活用範囲も拡大、5Gのスタートもあって、コロナ禍収束後更に大きく成長するでしょう。

労働力確保の手当て出来ず
総務省公表の昨年10月現在の人口推計で日本人の自然減は49万人で過去最多、厚労省公表の外国人労働者が19万8千人増えています。コロナ禍で入国制限が長引けば労働力不足を外国人で補っている弱さが露呈します。
「働き方改革」で中小企業にも2020年4月から、労働時間の上限規制(労基法36条)が施行されたが殆どニュースになっていない。ちなみにパート・有期法の適用は2021年4月である。

SDGsに繋げたい
環境省「うちエコ診断士」3年に1度の資格更新研修。今年は違ってeラーニング。気候変動問題、地球温暖化対策技術個人情報管理・消費者問題の3科目を受講し、その後120分間の○☓テスト。完了を押すと、即点数と合否判定が画面表示される何だかゲーム感覚のテストでした。温室効果ガス総排出量は、2018年度まで5年連続減少しました。経済の停滞で2019年度、2020年度とさらに減少しても収束後に、いかに持続可能な社会構造に移行できる形での経済の立て直しにできるかも課題です。

自室の窓から見える富士の姿が、春の時期にも関わらず松戸からもよく見えます。
「麟鳳遊」、伝説の麒麟や鳳がゆったりと安心して大空を遊んでいるという禅語ですが、その様な穏やかな日々を願っています。

執筆者プロフィール:

稲林豊太郎(いなばやし とよたろう) 1979年4月診断士登録
岩谷産業株式会社で主にエネルギー事業を担当、関係会社(アウトドア用品会社、ガス・リフォーム会社)社長等を務め、2019年7月退職、独立準備中、松戸商工会議所経営相談員趣味はトレッキング、毎年20回程度、丹沢、奥多摩、奥秩父を歩き回っています。富山県高岡市生れ大阪府豊中市育ち、1984年転勤で東京に

BIZREN☆通信 15号 「TSUNAGU ~つなぐ~」

2020年2月 阿部隆

2020年、いよいよ東京オリンピックイヤー。学生時代に陸上競技をかじっていたこともあり、男子400mリレーでのメダルが楽しみです(観戦チケットないのでTVで)。今年は令和初のお正月でしたが、例年どおり箱根駅伝をテレビで観戦。今年は特にハイペースなレース展開で、復路の鶴見中継所ではやはり繰り上げスタート。毎年心が打たれます。
バトンも襷もつながないと、成立しませんよね。ということで、今回は「つなぐ」をテーマに、先日資格取得した承継士と、私の企業内での後輩育成奮闘記からの気づきを少しご紹介いたします。

-事業承継士-
事業承継の専門家として、ということではないですが、いろいろな分野のノウハウを学ぶための一つとしてこの資格があることを知り、勉強のつもりで昨年の11月に土日祝日の全5日間を利用して事業承継の実態や実務について講義を受けてきました。(東京タワー足元の機械振興会館で、天皇御即位用ライトアップが見られました)

後継者がいない、後継者がいても経営者として未熟で引き継げない。事業承継において、後継者問題がまず上がりますが、それに付随して相続や節税対策などの問題も多いようです。それらの問題は個別に切り出され、それぞれの専門家(弁護士や税理士)が解決にあたるため、部分最適となりやすいとのこと。
そこで、関係者全体が納得できる落としどころを見つけ、トータルでどう折り合いをつけるのか、全体最適で承継の実現させるのが承継士のお仕事。企業の代表といえ人ですし、いろいろと悩みや秘密も抱えているもの。そういった人間の裏の部分や気持ちをくみ取ってこそ、代表と繋がることができるのだとか。

診断士というかPM向きのこの資格は、今年度お世話になっているPM養成マスターコースともつながるところが多く、いろいろなノウハウをリンクさせて学ぶことができました。
さらに企業のバトンパスを実現させるこの資格、実は税理士、公認会計士、弁護士など様々な士業の方が講座を受講されています。そういった専門家の方々との関係づくりもいい収穫でした。ライフプランナーの方には自分の保険も見直してもらいました(笑)

-後輩育成-
昨年から、新人の教育係を任されています。東大博士課程卒というハイスペックに、期待とむしろ自分で大丈夫?という不安の中、半年経ってみたものの…あまり成長の手ごたえがなく、正直焦っています。人を育てるのはなかなか難しい。
そんな中、先日執筆担当した媒体で取り上げられた「ジョハリの窓」の考え方を取り入れつつ、なるべく寛大に(?)接することに。

彼のわからないことが多いのは想定できるものの、教えたことがどこまでわかっているのかが謎。まずは、お互いの秘密の領域にある知識やノウハウを公開の領域へもっていかなければ話が進まない。だからこそ話し合うことで共有しつつ、互いの盲点を知ることにも繋がったり。
実はこれ、そういった経験が少ないほど自分の知らない領域(右半分)がいっぱいってことですよね。若手は可能性がいっぱいある=盲点&未知の領域の開拓が進んでいないってことなのかもしれません。彼がいつか後輩を育てられるようになるにはどうしたらいいか。それを考えることで自分も成長できれば。

-最後に-
平成から令和へ、現代表から後継者へ、先輩から後輩へ、時代や思いやノウハウをつなぎ続けることは難しい。それは自分が襷を持っているときは、それをつなぐために必死で、つないだ襷がその先まで続くことを考える余裕がないからかもしれません。だからこその監督役が必要とされるのですが。どうつなぐか、だけでなくその先を考えること、その大切さに気づかせてもらいました。この目線で診断士や承継士として活躍したいですね。

皆さんも、BIZRENやの様々な研究会活動で多くの人とつながりをもつことで、自分の盲点の領域に気づくことがあるのではないでしょうか?きっと多くの方が実感していらっしゃると思います。
いろいろな活動に参加して、新たにつながる仲間と、もっと広い窓からいろいろな景色がみられるよう、今年も走っていきましょう!

執筆者プロフィール:
阿部隆(あべたかし):2019年5月診断士登録
2008年から富士通株式会社に所属、現在は富士通クライアントコンピューティング株式会社(FCCL)にて、モバイルノートPCの筐体設計開発に携わるハードエンジニア。趣味は散歩とスノーボードとお酒。最近のブームはスパークリングワイン。

BIZREN☆通信 14号 「丸くなるな、かじりまくれ!」

2020年1月 三井善樹

皆さん あけましておめでとうございます。ことしは子年。ネズミといえば「かじる」ことが習性なので「かじる」話をしようと思います。デジタル大辞泉で調べると、①硬いものの端をかみとる②物事のほんの一部分だけ学ぶという意味があります。まずは、物事の部分だけかじる話。

とにかく、かじりまくれ!!
昨年11月13日、私はBIZREN体育会メンバーとともに皇居ランに参加した。といっても、その日参加したのは皇居ランメンバーのU氏と私だけ。リーダーのS氏はインフルにかかりそれでも申し訳なさそうにスタートの立ち合いに来てくれた。U氏はラガーマン、登山家で走ることはお手のものだが、私にとっては初めての皇居ランである。若いころ少年サッカーコーチのトレーニングで痛めた膝をかばっての一周5キロは結構しんどい。事情を察したU氏も私にペースを合わせてくれ41分かけて一周した。大嘗祭前日の夜の皇居は若者のランナーであふれていた。桜田門から眺める夜景がきれいだったなあ。
ひと走り後、ささやかな達成感を味わいながらの生ビールは格別である。BIZREN体育会の今後の話に花が咲いた。「M:ところで、Uさんは、どうしてラグビーや登山を始めたの?」「U:なぜでしょうかねえ?」「M:2つの競技に何か共通点が有るの?」「U:うーん、目の前の障害に対してのチャレンジですかね。そういえば今の僕の仕事にも共通しているところがありますよ」人が物事に没頭するには意味がある。仕事であろうが趣味やスポーツであろうが、人生を豊かにするそれぞれ特有の価値がある。障害を乗り越え頂を取る、的を射る瞬間の興奮、継続した安定感など、価値は様々であるが、それぞれに相性の良い価値があるようだ。だからそれを大切にして続けることができる。しかし、そのような価値との出会いは偶然のめぐり合わせが多く、機会がなければ生涯気付かない。とにかくかじりまくって相性の良い価値に出会う機会を増やすことだ!

続いて、硬い(大事な)ものをかじられてはならない話。

かじられて丸くなるな!!丸くなっても、芯までかじられるな!!
昨年末のBIZREN関連プロジェクトの忘年会で、ベテラン企業内診断士S氏と話した。彼は開発マンでありながら診断士の実務も毎年人の3倍こなす有能な企業内診断士である。開発マンに似合わず口が達者で、これまで巧みに社内を渡り歩き本業と診断士の業務を両立させてきた。ところが、昨年の補助金申請プロジェクトではいつものパフォーマンスを発揮できなかったようだ。酒の席で私がそのことを皮肉ると、「いやー、申しわけありません、今回は本業の開発提案に時間を取られてしまって」と釈明する。年齢的には幹部の仲間入りの頃合いだろうから、将来を決める重要な時期に差し掛かっているのだろう。「ところが、私の開発提案は、お偉いさんからあれこれ手を入れられ、原型をとどめないほど丸くなってしまいましたよ。」と自嘲する。私が「BIZRENの模範生がそんな情けないことを言っちゃだめだよ」と茶化すと「ひえー、反省しています。来年はかじられないようにします」などととぼける。人は社会に出て荒波にもまれると、「物分かりが良いよね」、とか「丸くなったね」などと言われ、大人として認められたのではと勘違いすることがある。本来の自己主張(芯)をすべてかじり取られ、原形をなくすまでまるくなってはならない。さもなければ、あらかじめ張りぼてを用意し、相手に思う存分かじらせて、肝心な芯は守り切るようなしたたかさも必要だ。世渡り上手のS氏の場合も、まんまるにかじられたと見せかけ、ちゃっかり肝心なところは守り切ったのではと期待している(笑) いずれにしても、自身のアイデンティティーまでかじり取られては元も子もない。

かじり、かじられ」の場ここにあり!!
BIZRENにはいろいろなプロジェクトやイベントがあり「しゃべコラ」は良い意味で「かじられ」の場でもある。かじられるといっても多くは愛情が込められたかじりなので安心して欲しい。自身の仕事上の悩みや問題をさらけ出すと、それをみんなが「かじる」ことで新しい気付きを与えてくれる。ところが、BIZRENメンバーの半分以上が参加している補助金プロジェクトはそうは行かない。申請書の仕上がりを評価するチェックマンのかじりは手厳しく、余計な文書や非論理的な文書は容赦なくかじり取られる。
また、昨年からスタートしたBIZREN体育会は、互いに趣味のスポーツを紹介し人を通じて新しい価値との出会いの場を目指す。他の人のいろいろな趣味を「ひとかじり」することで、自分にふさわしい価値にたどり着くセレンディピティーを提供する。

今年はネズミのごとく、大いにかじりまくりましょう。世知辛い世の中ですので、やむなくかじられることもあるでしょう。その時は少なくとも芯までかじられる事がないように(笑)

執筆者プロフィール:
三井善樹(みついよしき): 企業内診断士ビジネス連携研究会(BIZREN)代表幹事。1994年に国内情報機器メーカーを退職し、経営情報戦略コンサルタントとして独立。2005年から経営革新と販路開拓を一体化したビジネスレップ事業を開始。専門は経営工学。趣味は料理とスポールブール(日本SB連盟会員)

BIZREN☆通信 13号 「小笠原紀行」

2019年12月 岩城雅郁

皆さん明けましておめでとうございます。令和の2年目、どのようにお過ごしでしょうか。 今回は、私が昨年暮れに訪問した、小笠原諸島の旅をレポートします。

【ここも東京都!!】
小笠原諸島は東京の中心から南に約1,000km。聟島、父島、母島の3つの列島から構成されています。人が住んでいるのは父島と母島だけで、あとは無人島です。ご存知の通りここはれっきとした東京都です。従って走っている車は「品川」ナンバー、地上波テレビは東京23区内と全く同じチャンネルが見れます(ケーブルTVですが)。

【世界自然遺産!!】
こちらも皆様ご存知の通り、小笠原諸島は世界自然遺産に登録されています。各島固有の動植物が多く生息しておりこれらが登録の理由となっているそうです。そして入島の際は、外来の種子が付着している可能性があるため、靴の泥を良く落とすなど生態系を守るための取り組みがされています。

【往復で丸2日!!】
なんといっても、行くまでの不便さは東京都とは思えません!都心から1,000kmも離れているのに船便しかなし、しかもおよそ1週間に1便しかありません。一度小笠原に行くと6日間は帰ることができません。片道24時間、往復する時間だけでも48時間=2日間消費しますので、ある意味「贅沢な旅」と言えるのではないでしょうか。とはいえ外洋を航行するため結構揺れますので、船に弱い方は厳しいかもしれません。

【ボニンブルー!!】
広大な太平洋の真ん中にポツンと存在する小笠原諸島。海の色は特有の青さを誇り、その色を「ボニンブルー」と呼んでいます。ボニンとは昔は無人島だったことから、ムジン→ブニン→ボニンと訛った表現だそうです。

【絶景、絶景!!】
人による開発がされていないこともあり、至るところに絶景が広がります。その中でも何といっても絶景なのが、南島の扇池。島に入れる期間も制限があり、ガイドさんがいないと上陸することができません。展望エリアから眺める扇池はインスタグラムの世界です。

【クジラウォッチング!!】
冬期にはクジラが島の近郊に現れます。私もクジラウォッチングツアーに参加しましたが、冬としては暖かくクジラは見れないと途中まで諦めていましたが、2回遭遇することができました。1日かけても見れない時もあるとのことですので、本当にラッキーだったと思います。クジラたちの雄大な泳ぎを体験できて幸せです。

【感動のフィナーレ!!】
父島離島の日、島の皆さんからの盛大な送り出しを体験します。この島では船が出港する際に島民の皆さんからかけられる言葉は、「いってらっしゃーい」。東京(内地)へ行ったらまた帰ってきてね、という思いを込めたあいさつです。そして船が出航すると、小型の観光船が湾内を並走し、「いってらっしゃーい」と最後の言葉を投げかけてくれます。ラストは観光船から感謝を込めたダイビング!他の出港では見かけない感動的なフィナーレを迎えます。


【最後に】
船便の関係から6日間で小笠原の動植物、景色、そこに住み、働く人々と接し、非日常を心ゆくまで堪能し、リフレッシュすることができました。皆さんも機会があれば是非体験してみてください。

執筆者プロフィール
岩城雅郁(いわきまさふみ): 2013年4月診断士登録2019年12月まで電子機器メーカー国内販売会社に勤務し、マーケティング、プロモーションに携わる。2020年1月より旅館業向けの経営コンサルティング会社に転職。趣味は神社めぐりで、これまでに全国3000社以上の神社に参拝。