BIZREN☆通信 18号 「お金の寿命も延ばしたい」

2020年9月 宮司和幸

時価総額2兆ドルの一方で・・・

先日Apple社の時価総額が2兆ドル(約210兆円)を超えた。東証市場一部全社(約2,100社)の時価総額合計が約600兆円であるから、Apple社1社でその3分の1の価値があるとマーケットで評価された。今や世界のトップ企業は、GAFAをはじめ米国や中国勢が大半を占めているが、バブル期の1989年、世界の時価総額上位50社にうち、実に32社を日本の企業が占めていた。現在トップ50に入るのはトヨタ自動車1社だけで、日経平均株価は、1989年12月29日の史上最高値38,915円の約6割の水準で推移している。

家計の金融資産は増えている?

そうした中でも、日本の家計の金融資産は1,800兆円まで増加し続けているが、その半分は現金・預金が占めている。これは欧米の状況とはかなり異なり、特に株式や投資信託が占めるシェアは約15%と低く、金融資産の額は増加しているとはいえ、その伸び率は欧米と比較して低い原因ともなっている。

日本で、株式投資をしたこともないし、関心もないという人は約7割で、その主な理由は「分からない(難しい)」、「怖い」、「元本を減らしたくない」等があげられる。少子高齢化や人生100年時代が本格化する中、今後の年金の水準は不透明であり、健康だけではなく、自らが保有する資産が死ぬまで尽きないように「お金の寿命も延ばす」ことは、老後不安を払しょくするのに非常に重要となっている。

資産形成への取組み

そのための自助努力を少しでも進めたいという思いから、「貯蓄から投資(資産形成)へ」という掛け声の下、20年以上も前から金融関係者は多くの取組みを行ってきた。現在の金利で100万円を5年間銀行に預けても、利息は1万円にも満たない。それならば、リスクは多少あるにしろ株式をはじめ多様な商品に資産をバランスよく振り分けた方が得られるものは大きいというものである。

ただ、老後の備えを退職金をもらってさあ始めようと思っても極めてハードルは高い。理想は現役の時から、日常的に使うお金は現預金、もしもの備えは保険、将来の準備は株式等とバランスよく資産形成を行うことに慣れておくことだろう。その中で職業柄、よく株式投資のことについて聞かれるのでその際の回答ぶりを紹介したい(あくまでもプライベートのやりとりです)。

まずは漫画から?

最もよく聞かれるのは「よく分からない」だが、その際は「インベスターz」という漫画をお勧めしている。東大受験をテーマにブレイクした「ドラゴン桜」と同じ漫画家の作品で、全21巻と少し長いが、かなり読みやすい。そうすると大凡「そんなことはいいから、とりあえず何をしたらよい?」と続くのだが、確定拠出年金(DC)を行っていないのであれば、まずそれを勧めるし、行っているのであれば、対象商品を預金だけではなく少しずつでも投資信託等に振り分けることを紹介している。DCは、拠出分の所得控除があるので、それだけでも非常に魅力的なものだと思う。

3つのキーワード

また、「何を買ったらよい?」というのもよくある質問である。もちろん個別銘柄や商品を答えることはできないが、趣味程度であれば、「自分が好きな企業のことを調べてみたら?」と答えるが、将来のために本格的に準備しておきたいということだと、「長期」、「積立」、「分散」という3つのキーワードを伝える。要は、長期にわたり、こつこつと決まった額を、できるだけ異なる商品に投資していくことが有効ということである。運用の成果は、保有期間が長いほど、また、例えば、国内と海外、株式と債券等できるだけ多様な商品に分散するほど、高くなる傾向がある。

自分で商品を選ぶのが難しければ、仕組的にそれが確保され、かつ、非課税でもある「つみたてNISA」から始めるのがよいであろう。さらに、定年後、収入が不足する分は資産を切り崩して補填しつつも、しばらくは資産形成も続ける方がお金が尽きるまでの期間は長くなりやすい。

中小企業の応援

もちろん資産形成だけがお金の寿命を延ばす唯一の方法ではない。生活のレベルをいきなり変えるというのはかなり難しいだろうが、できるだけ支出を抑えるというのも一つの方法である。また、年金以外の収入を得るために、できる限り長く働くというのは、最も有効だし、確実だと思う。中小企業はそうした受け皿にもなりやすいのではないかと考えており、その応援はずっと続けていきたい。

執筆者プロフィール:
宮司 和幸 (みやじ かずゆき):2019年5月診断士登録。
証券・金融・商品関係の会社に勤務。現在は広報・IRを担当。趣味は、スカッシュ、サックスフォン、旅行等いろいろあったが・・・現在は3歳と6歳の男の子の育児に奮闘中。目下の課題は、自由時間の確保。

BIZREN☆通信 17号 「テレワークからポストコロナを考える」

2020年8月 増渕健二

<コロナ禍と働き方>

8月上旬時点で、各地過去最大の超えるコロナウイルス新規感染者が出ており、まだまだコロナ禍の終息の兆しが見えない状況かと思います。西村経済再生担当大臣からも「テレワーク7割の推進」を経済界に要請しており、首都圏の会社を中心に今後もテレワークの推進は続くのではないでしょうか。

筆者も社内のIT環境が整ったことで、4月より完全在宅勤務となっており出社せず、今日この時点も自宅でテレワークを行なっております(私物整理のために1日だけ出社が許されましたが、出社時間が細かく管理されており、他の社員との接触は禁止されておりました。)。ウイルスが弱毒化ないしは感染者が急激に減る、またはワクチンや治療薬がすぐ実用化されない限り、年内はほぼテレワークとなる予定です。

<中小企業のテレワーク状況>

筆者のように、多くの大企業ではテレワークの推進が行われておりますが、中小企業ではどのような状況でしょうか。以下、デル・テクノロジーズ株式会社(8月1日よりデル株式会社とEMCジャパン株式会社の合併により社名変更)による、「中小企業のテレワーク導入状況に関する調査結果( https://blog.dell.com/ja-jp/survey-telework_20200729/)」を参考にしながら確認します。

まず、テレワーク導入率の推移についてですが、3月時点の13%から7月時点では36%に上昇しています。これは4月上旬に緊急事態宣言が発令され、中小企業もテレワーク意向が一気に高まったためだと考えられます。業種別で見ると、「情報通信業」が最もテレワーク導入が進んでおりますが、「建設業」、「製造業」などは導入検討をしていない割合が多いことがわかります。

「製造業」、「建設業」は物理的な「現場」が業務の中心にあるため、テレワーク導入がどうしても難しいことが原因のようです。

また、導入意向について見ると、4割以上の回答者がテレワークに「全く関心がない」または「あまり関心がない」ことがわかります。

<テレワークの未来と診断士にできること>

以上の調査結果から、中小企業のテレワーク状況は「2極化」が進むと言えるのではないでしょうか。非対面型業務が多い情報通信業はさらにテレワーク推進への投資が進む一方で、対面型業務や現場型業務が多い業種ではコロナ前の働き方を今後も継続する可能性が高いと言えます。

診断士として、中小企業からテレワーク導入の相談が来た場合は、こうした状況を踏まえた助言が必要となります。テレワークのための労務管理からIT投資、また非対面型の営業戦略立案など、幅広い視野でバランスを見ながらトータルコーディネートできるスキルやノウハウを持っていることは、中小企業診断士としての強みと言えるのではないでしょうか。

<ポストコロナに向けて>

コロナ禍が終息しても、場所と時間に縛られず働けるメリットからテレワークを継続する企業は多いのではないかと思います。テレワークが「ニューノーマルスタンダード」となることで、様々な課題点が表出すると思われます。例えば、採用面ではテレワーク可能職種に人気が集まり、テレワーク困難職種の人材不足が加速することが予想されます。一方、テレワークだと、社員間で顔を合わせる機会が少ないことでのコミュニケーショントラブルも発生しやすいと言えます。

私自身もITハードウェアメーカーとして、中小企業診断士として、こうした課題解決の支援により注力したいと思います。

執筆者プロフィール:
増渕健二(ますぶちけんじ) 2017年6月診断士登録

外資系ITハードウェアメーカー勤務の企業内診断士。現在は完全在宅勤務で、インサイドセールとして従事。0から1を作ることに興味・関心があり、診断士としては創業支援や新規事業開発支援、勉強会の主催を行なっている。趣味はランニング。横浜市生まれ横浜市育ち、東京中央支部所属。

2020年度実績

第108回 2020年04月10日(金) 総会
第109回 2020年05月08日(金) 勤務先事例紹介、実務従事報告
第110回 2020年06月12日(金) 勤務先事例紹介、自己紹介、働き方改革について特別ミニセミナー
第111回 2020年07月10日(金) 勤務先事例紹介、Teams勉強会
第112回 2020年09月11日(金) 勤務先事例紹介、10bizセミナーによるスキルアップ
第113回 2020年10月09(金) 勤務先事例紹介、New Normal時代の仕事、私生活の取り組みの変化
第114回 2020年11月13日(金) 勤務先事例紹介、副業について(ディスカッション)
忘年会 2020年12月11日(金) オンライン忘年会、「お勧めの1冊」コンテスト等
第115回 2021年1月8日(金) 勤務先事例紹介、今年の個人的なテーマ、抱負
第116回 2021年2月12日(金) 勤務先事例紹介、ペーパーレス化の取り組みについて(ディスカッション)
第117回 2021年3月12日(金) 勤務先事例紹介、コロナと診断士活動~コロナ禍から得た経験をどのように活かすか

※全回オンライン開催

BIZREN☆通信 16号 「コロナ禍の向こうに何を創る」

2020年4月 稲林豊太郎

外出自粛の日々
在宅勤務で、ネット会議や、面談の延期や中止連絡。そんな中での時差通勤、やむを得ない外出。本当にご苦労さまです。明かるいテーマにしたかったのですが、この時期、コロナ禍抜きには語れず申し訳ありません。

売上ゼロで倒産多発・経済大混乱時代を生き抜く覚悟を
中小企業は、2~3か月の資金しか持っていないところが多い。4月にストップすれば6月~7月に手元資金が無くなります。この恐さ感覚が、大企業内の診断士には判りづらい。
4月も半ばを過ぎ支援策がやっと出てきて、内容面も幅広いですが、申請に対応する処理スピードの遅さが問題です。医療も同じですが、この国はプロセス管理が苦手です。
在職していたガス・リフォーム会社から電話があり、家庭用はガス量が前年比伸びており、業務用(飲食、学生寮、観光施設)大幅ダウンとのこと。今後の集金を心配していました。超優良企業で心配はいらないですが、「9月末まで、月ごと、用途別販売量見込みを作成、怖がらず悪い数字を直視せよ、行動策を具体的につくって、見込差異・変化見逃すな。不安感は力にならない」と応答したところです。

落ち着いた先の異質な社会を少しでも見通しておきたい
診断士としては、「PEST分析」準備をしておくべき時と感じています。医療援助や薬品開発を梃に米中間の覇権争いが激化、東南アジア、中東、アフリカへの勢力図に変化があれば、国際的なサプライチェーンが変化し、日本企業の影響はどうか。IMFの世界経済見通し2020年-3.0%、2021年5.8%回復(4月20日発表 実質GDP、年間増減率%)
0000年米国  ユーロ圏  日本   中国  インド
2020年 -5.9  -7.5   -5.2   1.2   1.9
2021年  4.7    4.7    3.0   9.2   7.4

筆者は原油価格落ち込みと変動の影響、日本の輸入原価は下がりますが、中東の金融力低下、米国、露等の産油国景気悪化が長引くバランスの悪さは心配です。

テレワーク導入、IoT化は加速
技術上も、規制的にも課題はありますが、このコロナ禍が、唯一残す“福”だろうと思います。労働時間管理の問題や、ネット環境未整備の場所、情報セキュリティと、いろいろありますが、コストより何より安全優先の中で便利さを学んだ人間の力は大きい。
「うちは現場仕事で」という声もありますがセンサー、IoT活用範囲も拡大、5Gのスタートもあって、コロナ禍収束後更に大きく成長するでしょう。

労働力確保の手当て出来ず
総務省公表の昨年10月現在の人口推計で日本人の自然減は49万人で過去最多、厚労省公表の外国人労働者が19万8千人増えています。コロナ禍で入国制限が長引けば労働力不足を外国人で補っている弱さが露呈します。
「働き方改革」で中小企業にも2020年4月から、労働時間の上限規制(労基法36条)が施行されたが殆どニュースになっていない。ちなみにパート・有期法の適用は2021年4月である。

SDGsに繋げたい
環境省「うちエコ診断士」3年に1度の資格更新研修。今年は違ってeラーニング。気候変動問題、地球温暖化対策技術個人情報管理・消費者問題の3科目を受講し、その後120分間の○☓テスト。完了を押すと、即点数と合否判定が画面表示される何だかゲーム感覚のテストでした。温室効果ガス総排出量は、2018年度まで5年連続減少しました。経済の停滞で2019年度、2020年度とさらに減少しても収束後に、いかに持続可能な社会構造に移行できる形での経済の立て直しにできるかも課題です。

自室の窓から見える富士の姿が、春の時期にも関わらず松戸からもよく見えます。
「麟鳳遊」、伝説の麒麟や鳳がゆったりと安心して大空を遊んでいるという禅語ですが、その様な穏やかな日々を願っています。

執筆者プロフィール:

稲林豊太郎(いなばやし とよたろう) 1979年4月診断士登録
岩谷産業株式会社で主にエネルギー事業を担当、関係会社(アウトドア用品会社、ガス・リフォーム会社)社長等を務め、2019年7月退職、独立準備中、松戸商工会議所経営相談員趣味はトレッキング、毎年20回程度、丹沢、奥多摩、奥秩父を歩き回っています。富山県高岡市生れ大阪府豊中市育ち、1984年転勤で東京に

BIZREN☆通信 15号 「TSUNAGU ~つなぐ~」

2020年2月 阿部隆

2020年、いよいよ東京オリンピックイヤー。学生時代に陸上競技をかじっていたこともあり、男子400mリレーでのメダルが楽しみです(観戦チケットないのでTVで)。今年は令和初のお正月でしたが、例年どおり箱根駅伝をテレビで観戦。今年は特にハイペースなレース展開で、復路の鶴見中継所ではやはり繰り上げスタート。毎年心が打たれます。
バトンも襷もつながないと、成立しませんよね。ということで、今回は「つなぐ」をテーマに、先日資格取得した承継士と、私の企業内での後輩育成奮闘記からの気づきを少しご紹介いたします。

-事業承継士-
事業承継の専門家として、ということではないですが、いろいろな分野のノウハウを学ぶための一つとしてこの資格があることを知り、勉強のつもりで昨年の11月に土日祝日の全5日間を利用して事業承継の実態や実務について講義を受けてきました。(東京タワー足元の機械振興会館で、天皇御即位用ライトアップが見られました)

後継者がいない、後継者がいても経営者として未熟で引き継げない。事業承継において、後継者問題がまず上がりますが、それに付随して相続や節税対策などの問題も多いようです。それらの問題は個別に切り出され、それぞれの専門家(弁護士や税理士)が解決にあたるため、部分最適となりやすいとのこと。
そこで、関係者全体が納得できる落としどころを見つけ、トータルでどう折り合いをつけるのか、全体最適で承継の実現させるのが承継士のお仕事。企業の代表といえ人ですし、いろいろと悩みや秘密も抱えているもの。そういった人間の裏の部分や気持ちをくみ取ってこそ、代表と繋がることができるのだとか。

診断士というかPM向きのこの資格は、今年度お世話になっているPM養成マスターコースともつながるところが多く、いろいろなノウハウをリンクさせて学ぶことができました。
さらに企業のバトンパスを実現させるこの資格、実は税理士、公認会計士、弁護士など様々な士業の方が講座を受講されています。そういった専門家の方々との関係づくりもいい収穫でした。ライフプランナーの方には自分の保険も見直してもらいました(笑)

-後輩育成-
昨年から、新人の教育係を任されています。東大博士課程卒というハイスペックに、期待とむしろ自分で大丈夫?という不安の中、半年経ってみたものの…あまり成長の手ごたえがなく、正直焦っています。人を育てるのはなかなか難しい。
そんな中、先日執筆担当した媒体で取り上げられた「ジョハリの窓」の考え方を取り入れつつ、なるべく寛大に(?)接することに。

彼のわからないことが多いのは想定できるものの、教えたことがどこまでわかっているのかが謎。まずは、お互いの秘密の領域にある知識やノウハウを公開の領域へもっていかなければ話が進まない。だからこそ話し合うことで共有しつつ、互いの盲点を知ることにも繋がったり。
実はこれ、そういった経験が少ないほど自分の知らない領域(右半分)がいっぱいってことですよね。若手は可能性がいっぱいある=盲点&未知の領域の開拓が進んでいないってことなのかもしれません。彼がいつか後輩を育てられるようになるにはどうしたらいいか。それを考えることで自分も成長できれば。

-最後に-
平成から令和へ、現代表から後継者へ、先輩から後輩へ、時代や思いやノウハウをつなぎ続けることは難しい。それは自分が襷を持っているときは、それをつなぐために必死で、つないだ襷がその先まで続くことを考える余裕がないからかもしれません。だからこその監督役が必要とされるのですが。どうつなぐか、だけでなくその先を考えること、その大切さに気づかせてもらいました。この目線で診断士や承継士として活躍したいですね。

皆さんも、BIZRENやの様々な研究会活動で多くの人とつながりをもつことで、自分の盲点の領域に気づくことがあるのではないでしょうか?きっと多くの方が実感していらっしゃると思います。
いろいろな活動に参加して、新たにつながる仲間と、もっと広い窓からいろいろな景色がみられるよう、今年も走っていきましょう!

執筆者プロフィール:
阿部隆(あべたかし):2019年5月診断士登録
2008年から富士通株式会社に所属、現在は富士通クライアントコンピューティング株式会社(FCCL)にて、モバイルノートPCの筐体設計開発に携わるハードエンジニア。趣味は散歩とスノーボードとお酒。最近のブームはスパークリングワイン。

BIZREN☆通信 14号 「丸くなるな、かじりまくれ!」

2020年1月 三井善樹

皆さん あけましておめでとうございます。ことしは子年。ネズミといえば「かじる」ことが習性なので「かじる」話をしようと思います。デジタル大辞泉で調べると、①硬いものの端をかみとる②物事のほんの一部分だけ学ぶという意味があります。まずは、物事の部分だけかじる話。

とにかく、かじりまくれ!!
昨年11月13日、私はBIZREN体育会メンバーとともに皇居ランに参加した。といっても、その日参加したのは皇居ランメンバーのU氏と私だけ。リーダーのS氏はインフルにかかりそれでも申し訳なさそうにスタートの立ち合いに来てくれた。U氏はラガーマン、登山家で走ることはお手のものだが、私にとっては初めての皇居ランである。若いころ少年サッカーコーチのトレーニングで痛めた膝をかばっての一周5キロは結構しんどい。事情を察したU氏も私にペースを合わせてくれ41分かけて一周した。大嘗祭前日の夜の皇居は若者のランナーであふれていた。桜田門から眺める夜景がきれいだったなあ。
ひと走り後、ささやかな達成感を味わいながらの生ビールは格別である。BIZREN体育会の今後の話に花が咲いた。「M:ところで、Uさんは、どうしてラグビーや登山を始めたの?」「U:なぜでしょうかねえ?」「M:2つの競技に何か共通点が有るの?」「U:うーん、目の前の障害に対してのチャレンジですかね。そういえば今の僕の仕事にも共通しているところがありますよ」人が物事に没頭するには意味がある。仕事であろうが趣味やスポーツであろうが、人生を豊かにするそれぞれ特有の価値がある。障害を乗り越え頂を取る、的を射る瞬間の興奮、継続した安定感など、価値は様々であるが、それぞれに相性の良い価値があるようだ。だからそれを大切にして続けることができる。しかし、そのような価値との出会いは偶然のめぐり合わせが多く、機会がなければ生涯気付かない。とにかくかじりまくって相性の良い価値に出会う機会を増やすことだ!

続いて、硬い(大事な)ものをかじられてはならない話。

かじられて丸くなるな!!丸くなっても、芯までかじられるな!!
昨年末のBIZREN関連プロジェクトの忘年会で、ベテラン企業内診断士S氏と話した。彼は開発マンでありながら診断士の実務も毎年人の3倍こなす有能な企業内診断士である。開発マンに似合わず口が達者で、これまで巧みに社内を渡り歩き本業と診断士の業務を両立させてきた。ところが、昨年の補助金申請プロジェクトではいつものパフォーマンスを発揮できなかったようだ。酒の席で私がそのことを皮肉ると、「いやー、申しわけありません、今回は本業の開発提案に時間を取られてしまって」と釈明する。年齢的には幹部の仲間入りの頃合いだろうから、将来を決める重要な時期に差し掛かっているのだろう。「ところが、私の開発提案は、お偉いさんからあれこれ手を入れられ、原型をとどめないほど丸くなってしまいましたよ。」と自嘲する。私が「BIZRENの模範生がそんな情けないことを言っちゃだめだよ」と茶化すと「ひえー、反省しています。来年はかじられないようにします」などととぼける。人は社会に出て荒波にもまれると、「物分かりが良いよね」、とか「丸くなったね」などと言われ、大人として認められたのではと勘違いすることがある。本来の自己主張(芯)をすべてかじり取られ、原形をなくすまでまるくなってはならない。さもなければ、あらかじめ張りぼてを用意し、相手に思う存分かじらせて、肝心な芯は守り切るようなしたたかさも必要だ。世渡り上手のS氏の場合も、まんまるにかじられたと見せかけ、ちゃっかり肝心なところは守り切ったのではと期待している(笑) いずれにしても、自身のアイデンティティーまでかじり取られては元も子もない。

かじり、かじられ」の場ここにあり!!
BIZRENにはいろいろなプロジェクトやイベントがあり「しゃべコラ」は良い意味で「かじられ」の場でもある。かじられるといっても多くは愛情が込められたかじりなので安心して欲しい。自身の仕事上の悩みや問題をさらけ出すと、それをみんなが「かじる」ことで新しい気付きを与えてくれる。ところが、BIZRENメンバーの半分以上が参加している補助金プロジェクトはそうは行かない。申請書の仕上がりを評価するチェックマンのかじりは手厳しく、余計な文書や非論理的な文書は容赦なくかじり取られる。
また、昨年からスタートしたBIZREN体育会は、互いに趣味のスポーツを紹介し人を通じて新しい価値との出会いの場を目指す。他の人のいろいろな趣味を「ひとかじり」することで、自分にふさわしい価値にたどり着くセレンディピティーを提供する。

今年はネズミのごとく、大いにかじりまくりましょう。世知辛い世の中ですので、やむなくかじられることもあるでしょう。その時は少なくとも芯までかじられる事がないように(笑)

執筆者プロフィール:
三井善樹(みついよしき): 企業内診断士ビジネス連携研究会(BIZREN)代表幹事。1994年に国内情報機器メーカーを退職し、経営情報戦略コンサルタントとして独立。2005年から経営革新と販路開拓を一体化したビジネスレップ事業を開始。専門は経営工学。趣味は料理とスポールブール(日本SB連盟会員)

BIZREN☆通信 13号 「小笠原紀行」

2019年12月 岩城雅郁

皆さん明けましておめでとうございます。令和の2年目、どのようにお過ごしでしょうか。 今回は、私が昨年暮れに訪問した、小笠原諸島の旅をレポートします。

【ここも東京都!!】
小笠原諸島は東京の中心から南に約1,000km。聟島、父島、母島の3つの列島から構成されています。人が住んでいるのは父島と母島だけで、あとは無人島です。ご存知の通りここはれっきとした東京都です。従って走っている車は「品川」ナンバー、地上波テレビは東京23区内と全く同じチャンネルが見れます(ケーブルTVですが)。

【世界自然遺産!!】
こちらも皆様ご存知の通り、小笠原諸島は世界自然遺産に登録されています。各島固有の動植物が多く生息しておりこれらが登録の理由となっているそうです。そして入島の際は、外来の種子が付着している可能性があるため、靴の泥を良く落とすなど生態系を守るための取り組みがされています。

【往復で丸2日!!】
なんといっても、行くまでの不便さは東京都とは思えません!都心から1,000kmも離れているのに船便しかなし、しかもおよそ1週間に1便しかありません。一度小笠原に行くと6日間は帰ることができません。片道24時間、往復する時間だけでも48時間=2日間消費しますので、ある意味「贅沢な旅」と言えるのではないでしょうか。とはいえ外洋を航行するため結構揺れますので、船に弱い方は厳しいかもしれません。

【ボニンブルー!!】
広大な太平洋の真ん中にポツンと存在する小笠原諸島。海の色は特有の青さを誇り、その色を「ボニンブルー」と呼んでいます。ボニンとは昔は無人島だったことから、ムジン→ブニン→ボニンと訛った表現だそうです。

【絶景、絶景!!】
人による開発がされていないこともあり、至るところに絶景が広がります。その中でも何といっても絶景なのが、南島の扇池。島に入れる期間も制限があり、ガイドさんがいないと上陸することができません。展望エリアから眺める扇池はインスタグラムの世界です。

【クジラウォッチング!!】
冬期にはクジラが島の近郊に現れます。私もクジラウォッチングツアーに参加しましたが、冬としては暖かくクジラは見れないと途中まで諦めていましたが、2回遭遇することができました。1日かけても見れない時もあるとのことですので、本当にラッキーだったと思います。クジラたちの雄大な泳ぎを体験できて幸せです。

【感動のフィナーレ!!】
父島離島の日、島の皆さんからの盛大な送り出しを体験します。この島では船が出港する際に島民の皆さんからかけられる言葉は、「いってらっしゃーい」。東京(内地)へ行ったらまた帰ってきてね、という思いを込めたあいさつです。そして船が出航すると、小型の観光船が湾内を並走し、「いってらっしゃーい」と最後の言葉を投げかけてくれます。ラストは観光船から感謝を込めたダイビング!他の出港では見かけない感動的なフィナーレを迎えます。


【最後に】
船便の関係から6日間で小笠原の動植物、景色、そこに住み、働く人々と接し、非日常を心ゆくまで堪能し、リフレッシュすることができました。皆さんも機会があれば是非体験してみてください。

執筆者プロフィール
岩城雅郁(いわきまさふみ): 2013年4月診断士登録2019年12月まで電子機器メーカー国内販売会社に勤務し、マーケティング、プロモーションに携わる。2020年1月より旅館業向けの経営コンサルティング会社に転職。趣味は神社めぐりで、これまでに全国3000社以上の神社に参拝。

BIZREN☆通信 12号 「脱力系診断士ですが、何か?」

2019年11月 磯崎鈴華

BIZRENは今年で設立10年目。私は診断士歴=BIZREN歴=6年目になります。最初の頃は毎月の例会の参加者も数名で、よく言えばアットホームな雰囲気でしたが、ここ数年は毎年たくさんの方に入会していただき、例会もプロジェクト活動も活気づいてきたように思います。

「企業内診断士ビジネス連携研究会」という名の通り、BIZRENは企業内診断士が大半を占めます。一方で、時期は未定でも独立を視野に入れている方、「複業」(副業ではなく)志向の方、独立している方もいます。いろんなベクトルを持つ診断士が共存できるBIZRENの魅力とは何でしょうか。

私の個人的な意見になりますが、まず第一に「ゆるさ」だと思います。テーマ別の研究会やマスターコースとは異なり、特に活動内容は決まっていません。参加するペースも自由で、序列もほとんどありません。「ほとんど」と書いたのは、代表幹事の三井先生と、人生の大先輩には(一応)敬意を払うという意味で、基本的にはフラットな組織です。あまり縛りがないからこそ、忙しい企業内診断士でも続けられたり、他の診断士活動と掛け持ちできたりするのだと思います。

次に「プロジェクトの豊富さ」が挙げられます。プロジェクトは2つに大別できます。1つは実務従事や補助金申請など、診断士として実務経験を積み、スキルアップしたい(できればポイントも欲しい)というニーズを満たすもの。もうひとつは、テーマ別スキル向上や2 Hats倶楽部など、「こういうプロジェクトがあったら参加したいよね」「こういう仕組みがあったらいいのでは」という、提案型のものです。例会も含めて、参加者創出型のプログラムは、今後もBIZRENの基本的な方向性になるのではないでしょうか。

さらに、前号で小川さんが指摘してくれたように、年齢、性別、業界や、専門分野の異なる会員が所属する「多様性」も大きな特徴です。研究会での交流から得られた気づきやアイデア、ノウハウ、情報を本業に活かすか、診断士活動に活かすか、趣味に活かすのかは人それぞれですが、お互いの知見を活かして、協力し合い、何かを生み出すポテンシャルが存在します。そのポテンシャルを最大化するために、私は近視眼的にならない(目先の小さな利益を追わない)ことが重要だと考えています。オープンなスタンスで長期的につながっていれば、あるとき化学反応が起こり、自分たちの期待をはるかに上回るものが生み出されるかもしれません。

診断士の皆さんは、目標に向かって突き進むような意識の高い方が多いですが、私はあまり真剣に診断士活動をしてきませんでした。資格を取得したきっかけも、幅広いビジネス知識があれば翻訳(当時の本業)に役に立つかも、という程度だったので、「取得してこうなりたい」という明確な目標がありませんでした。今も独立やパラレルワークには興味がなく、かといって会社で出世したいとも思わない「脱力系」です。それでも「せっかく取った資格を何かしら役立てていきたい」という気持ちはありますし、毎月の例会やプロジェクトで良い刺激をもらい、前向きな気持ちになることが多いです。

事務局の運営も、私にとってはBIZRENの活動の一部です。3年目から会員担当、その後、連絡幹事を担当するようになりましたが、本業とは違う側面が鍛えられているように思います。具体的に言うと「全体を見る」視点と「お願いする」能力です。自分自身に出来ることは限られていますので、常に誰かにアドバイスを求め、助けてもらうことを考えています。会社のような組織ではないため、強制力がありませんし、私の頼みをきいたところで目に見えるメリットもありません。そんな中で、どのように他の幹事や会員の方を巻き込み、協力してもらうか・・・。そのノウハウを見出すことが出来たら、これからの人生の武器になりそうな気がします(笑)

もともと本稿に「『企業内診断士』のその先へ」というタイトルを付けようと思っていました。最近は企業内診断士や副業をテーマにした講演会やイベントも目に付くようになりましが、BIZRENではその一歩先、「企業内診断士という枠を取り払って、もっと自由に活動すること」を目指していきたいと思います。フリースタイルを実現する場として、気軽にBIZRENを活用していただけたら嬉しいです。最初に書いたように「ゆるさ」が特徴のBIZRENです。一人一人がやりたいことを提案して、どんどん形にしていく。そんな勢いのある研究会にしていきましょう。

最後に一言。仕事でもプライベートでも、人生にはさまざまなステージがあります。いろんな事情で、例会になかなか参加できない方もいますが、そんな方にも、自分のペースでBIZRENの活動を続けていただけたらと思います。プロジェクトへの参加だけでもOKです。長らく例会には出席していないけれど、伝説のように名前だけ知れ渡っている人もいます。久々に出席したら、知っている人がいないかもしれませんが、それはそれでエキサイティングですよね。同じ研究会に入ってみようと思った・・・共通点はそれだけでも、つながるには十分なんじゃないかと思います。

執筆者プロフィール
磯崎鈴華(いそざきすずか):2014年4月診断士登録。本業は、プロフェッショナルサービスを提供するグループのバックオフィスで、翻訳のコーディネーションと品質管理を担当。趣味はスポーツ観戦と食べること。ワークライフバランスという言葉が大好きで、働くのも遊ぶのもメリハリつけてやっています。

BIZREN☆通信 11号 「企業内診断士の多様性」

2019年10月 小川 貴之

まず、台風19号により被災された方々に、心よりお見舞いを申し上げます。BIZREN会員の皆様ご自身のみならず、ご家族、ご友人、勤務先および中小企業診断士としてのお客様などまで視野を広げると、かつてない規模の台風の前には誰しも無関係ではいられなかったのではないでしょうか。被災された方々におかれましては、復興にはご苦労も多いと思いますが、1日でも早く平穏な生活に戻れますようお祈りいたします。

【実務従事プロジェクト参加】

さて、我々企業内診断士によくある「中小企業診断士としてのスキルを磨く場が少ない」、「資格更新に必要な実務従事ポイントを獲得する機会がない」といった悩みに応える形でBIZRENが設けている機会の1つ「実務従事プロジェクト」に、先日、他のメンバーと合わせて計6名で参加させていただきました。

試験合格後に課せられる実務補習よりも自由度は高く、指導員も、明確な期限も、報告様式もなく、より実践的に実際の中小企業の診断を行うものです。実務補習のような総合診断でもよし、テーマを絞って補助金申請等に特化するもよし、診断先のニーズやメンバーのリソースに合わせて都度検討することになります。

企業診断に限らず、チームで仕事に取り組むにあたっては、メンバー間で得意分野や取り組み方のバランスが取れることが重要です。その点、今回のメンバーは経験や得意分野がうまく散らばっており、いわば“多様性” がうまく噛み合った結果、ヒアリングから報告会までを大過なく実現できました。

結果として、毎月の定例会だけではなかなか知ることのできないメンバーの個性に触れることができる貴重な機会にもなりました。この場を借りて、ご一緒させていただいたメンバーに改めて御礼を申し上げます。

【注目される“多様性”】

多様性といえば、最近は各分野でこの言葉が頻出しています。企業経営のシーンでは、外国人従業員を採用する日系企業はいまや珍しくもありませんし、エグゼクティブ層に目を向けても、金融庁・東証が取りまとめた<コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)>では、「取締役会はジェンダーや国際性の面を含む多様性を確保し、経営の監督の実効性を高めるべき」旨が記されています。

スポーツの世界でも、たとえばW杯でベスト8進出を果たしたラグビー日本代表は、出場選手に国籍要件を求めておらず、日本人・日本国籍を持つ海外出身者・外国籍の混成チームとなっています。

ところで、これらの多様性というのは、外形的な属性を取り上げたものがほとんどです。ここからさらに踏み込んでいった先にあるのは、個々の行動・心理特性です。ご参考までに、この点に注目した研究としては先駆けともいえる、ベルビンという社会心理学者のチームロール理論の一部を簡単に紹介します。

(ベルビンのチームロール理論)

・チームが成功するには9タイプの役割が必要(下表参照)

・役割は個人の心理特性によって決まる場合が多い

・必要なのはバランスのとれた個人ではなく、他者とバランスを取れる役割を持つ個人である

1人1人を見れば有能な人材で編成されたチームでも,成績の良いチームと悪いチームがありますが、1つのチームに同じ役割の人間ばかりがいてもチームはうまく機能しないということでしょうか。経験的にも納得しやすい理論のように思います。

【企業内診断士の“多様性”を活かすために】

多様性が機能するためには、お互いを尊重し調整する姿勢や仕組みが必要になります。実務従事プロジェクトのように中小企業診断士がチームアップして活動する時も、同様でしょう。

BIZRENには、同じ中小企業診断士でありながらまったく異なる文化の企業・部門で成果を上げている、まさに多様な人材が揃っています。加えて、企業内で仕事を進めるうえで重要な、他部門・他の従業員の意向を尊重し調整するという姿勢を備えているはずです。これら“多様性”と“尊重”は、我々企業内診断士が連携し活躍していくための拠り所ではないかと思います。

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執筆者プロフィール

小川 貴之(おがわ たかゆき):

2019年4月診断士登録

新卒で製紙会社に入社後、新聞用紙の生産計画担当、企業内労働組合の専従役員を歴任し、現在は株主総会や取締役会といった、会社法・コーポレートガバナンス関係業務に従事。

趣味は大学在学時のサークル活動を契機に始めた書道。今でも年に1度、当時の仲間と合同で個展を開催しています。

BIZREN☆通信 10号 「日本ワインと企業内診断士」

2019年9月 八木 晴信

私の今最も夢中になっている事柄のひとつが、ワインです。もっと深く知りたいと思い、山梨県で営まれているワイナリーのヴィンヤードクラブへ入会し、毎月、葡萄畑へ出向いて愛しい葡萄の世話をしています。冬の枯れ木のような休眠期から見てきた葡萄の木が、このコラムが出る頃には収穫できるまでに立派に育ち、醸造に向かっていくことでしょう。愛情を込めて見守り育ててきた葡萄からできたワインを味わい、堪能する日が待ち遠しいです。

日本で栽培された葡萄100%を使用し日本で醸造したワインを、「日本ワイン」と表示できることをご存知でしょうか。「国産ワイン」は、外国から濃縮還元果汁を輸入して日本で醸造したものも含まれます。神奈川県がワイン生産量No.1なのは、輸入した原材料を使用して大手飲料メーカーの工場で醸造されているからで、日本ワインに限定すれば、山梨県が生産量No.1です。

地理的表示(GI)保護制度に日本ワインの表示の法令化が加わったことで、消費者にとってもワインの違いが認識しやすくなったと同時に、ワイナリーにとってもグローバルの舞台での差別化が可能となりました。全国で約300軒ある日本のワイナリーは96%が中小企業で、我々、診断士の支援対象です。私は将来、日本のワイナリーの支援をすることを目指しています。診断士の使命である日本の発展に貢献するためにも、メイドインジャパンはど真ん中です。

ヴィンヤードクラブやワイナリー巡りを経験し、診断士として見えてきたワイナリー経営の課題があります。ワイナリーの起業は、初期投資が高額です。醸造機械は、1台数百万円以上で、何種類も必要であり、しかも醸造機械は年1回、秋しか稼働せず、ほとんど遊休の固定資産となっています。また、残念なことに、醸造の機械も醸造につかうオーク樽も国産のものはなく、輸入品を使用しています。企業連携で国産機械、林業との協業で国産樽が作れないものかと色々思案しています。

秋の収穫後の仕込みの時期は、ワイナリーは農業者から食品製造業に変わります。収穫されてきた葡萄でその年の醸造方法に変化を加え、各工程に流し醸造していく、その一方で、如何に効率的に作業ができるかも重要になってくる、諸々診断士にお手伝いができそうなところです。

原料となる葡萄の確保でいえば、自社畑からの収穫か、原料として他の畑のものを仕入れるかになります。苗木の価格高騰や葡萄の仕入れ値の高騰があり、収益性は下がっています。また、自社畑を持てば、収穫の時期には人手不足に頭を抱えます。何トンという葡萄を、時期を逃さず収穫する必要があり、そんなうまいタイミングで高品質な労働力を獲得していく方法を持ち合わせていなければなりません。

他には、日本ワインは日本製であり原価が高いので、輸入ワインとの価格勝負では分が悪く、さらにブルゴーニュなど高付加価値のブランドワインと競合になります。ワイナリーでの試飲を始め、SNSの活用やイベントへの出店でブランドの露出を増やすとともに、新規を含め顧客とのコミュニケーションの場と多く作り、ブランドを浸透させていくことが重要になります。

私も体験しているヴィンヤードクラブは、ワイナリー経営にとってとても重要な取組と言えます。葡萄を育てたい欲求を持つファンに葡萄栽培の場を提供する事によって、収穫時には高品質な労働力を確保できます。定期的にワイナリーへ来訪させ、メンバー特典を設ければ、ワイン販売も期待できます。良い口コミを広げ、新たなファンも獲得が可能になり、高品質な労働力確保とファンの定着を獲得できると考えられます。この取組みは、魅力あるワイナリーがファンを引き付け続ける努力をされているからこそできる取組なのです。

ワイナリーのみなさんは、ワインの魅力に魅せられ、取りつかれ、世界一の品質を目指し、そこでしか作れないこだわりのワインを作っています。ワインには、ストーリがある。作り手の想いと大地の声、ヴィンテージ。モノからコトへと消費者の傾向が変わり、ストーリを持って共感されるものが選ばれる時代になった。ワインはこの傾向に合致しており、需要も拡大していることから、まさに追い風となっています。さらにワインツーリズムなどで観光素材としても利用すれば、地域活性化にも貢献できます。

ただのワインラヴァーというところからワイナリー支援を目指す企業内診断士の妄想は果てしなく続きます。

私にとってワインは、食事に彩りを添えるだけでなく、葡萄栽培から始まり様々な人との係わりや経験を与えてくれ、私の人生を非常に彩ってくれています。 私は、ワインでいう樽のような存在で、ワイナリー経営へ香りづけできることを目標に、これからも日々のお仕事と診断士活動、ワイナリー巡りに精進して参ります。

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執筆者プロフィール

八木 晴信(やぎはるのぶ):

2018年3月診断士登録。鉄道会社に勤務。鉄道現場での勤務後、インターネットでのチケット発売システムの企画・開発に長く従事。
名古屋に単身赴任3年目。日本ワインマスターを目指し勉強中。
千葉ジェッツ、オービックシーガルズ、習志野シティFCを応援しています。